西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

西国三十三所 第十九番札所 革堂 行願寺 ~御所の近くの革聖のお堂 心優しき行円上人の行願寺~

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革堂

西国三十三所の第十九番札所は、霊麀山れいゆうざん革堂こうどう 行願寺ぎょうがんじです。京都御苑のすぐ南に位置し、寺町通りに面しています。小さなお寺ですが、参拝者も絶えず、地元の方々に愛されているお寺のようです。

革堂の巡礼情報 

寺号としては行願寺となりますが、古くから革堂の名で知られてきました。ここでも、革堂という通称の方を使わせていただきます。正確な日時までは分かりませんが、最近ホームページを開設されました。「お知らせ」*1に2021年5月21日の記載がありますので、そのころに開設されたのではないかと思われます。

革堂の縁起

革堂の成立縁起は、革堂のホームページに詳しく記載されています。

kaudau.jp(2021.5.30閲覧)

それによりますと、行願寺革聖と呼ばれた行円上人平安時代後期の寛弘元(1004)年に創建した、とされます。

修行中だった行円上人が、子どもを宿した母鹿を射止めてしまったことから、その行いを悔い、つねにその皮をまとって鹿の供養を行ったことから、革聖のお堂で革堂と呼ばれるようになったそうです。元々は御所の北にある一条通りにあったということです。

これに類するお話が実は空也上人にもあります。民俗学者の五来重さん*2によりますと、空也上人は侍が殺した旧知の鹿の角と皮をもらいうけて、杖に角をつけ、腰に皮衣を巻いたということです。確かに、 「西国三十三所 第十七番札所 六波羅蜜寺 ~武家の兵火の髑髏の原 空也上人と南無阿弥陀仏~」でご紹介した空也上人のお姿は、そのような出で立ちでした。

また、五来重さんによると革堂ご本尊である千手観世音菩薩にも興味深いエピソードがあるようです。『西国巡礼の寺』に掲載されている『元享釈書』の一節を引用させていただきます。

一夕夢に沙門来たり告て曰く、明日爾に異材を送らん。翌朝果して一僧至り、語りて曰く、賀茂神祠の側に一つの槻木有り、莓苔に纏われて幾千百歳ということを知らず。

夢のお告げで、上賀茂の神祠の側に苔に覆われた樹齢の分からない槻の木があるので、お渡ししましょう、ということです。行円上人はこの木を使って、千手観世音菩薩像を手ずからお造りになられたそうです。

さらにこの話には続きがあり、木の残りを使って刻んだ仏像が次の札所善峯寺ご本尊になった、とされています。葛井寺長谷寺ご本尊も同じ木で造られた、ということになっていましたが、革堂善峯寺もそうだというわけです。

この辺のお話は、西国三十三所内の札所同士の結びつきを強くしようとする古人の想像力から生まれたものかもしれません。

革堂の見所

革堂の見所をご紹介します。

山門

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※山門

小さいながらも重厚感のある、革堂山門です。寺町通りに面しています。江戸時代中期の宝永5(1708)年の大火の後、お寺は現在の場所に移されました。

本堂

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※本堂

革堂本堂です。江戸時代後期の文化12(1815)年に建造されました。堂内には開祖行円上人の作と伝わるご本尊千手観世音菩薩像が納められています。

鎮宅霊符神堂

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※鎮宅霊符神堂

境内の左側にある鎮宅霊符神をお祀りするお堂です。

寿老神堂

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※寿老神堂

境内入ってすぐの左側にある寿老神をお祀りするお堂です。一般的には「寿老人」と記載しますが、こちらでは「寿老神」と記載しておられます。

愛染堂

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※愛染堂

向拝のついている愛染堂です。

加茂大明神五輪塔

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※加茂大明神五輪塔

縁起でも触れられていたことから、関係が深いと考えられる加茂大明神の五輪塔です。白洲正子さん*3によると、屋根に当たる火輪だけが鎌倉時代の作で、後は時代が下るそうです。

革堂のご詠歌

ご詠歌とは、花山法皇が各札所で詠まれた歌と伝えられています。

はなをみて いまはのぞみも こうどうの

 にわのちぐさも さかりなるらん

(花を見て 今は望みも 革堂の

   庭の千草も 盛りなるらん)

漢字表記、歌の解釈は紀三井寺前貫主前田孝道*4によります。

「花を見て……」の花は、観音さまが手に持っておられる蓮の花です。その蓮の花は蕾で、これは実は私たち一切衆生を表しています。観音さまや仏さまは悟りを開いていらっしゃるので開いた蓮の花で表し、私たち衆生はまだ悟りを開いていませんので蕾の蓮の花で表します。しかし、全ての衆生はやがて仏になることのできる種、仏性を持っています。観音さまは、迷いや苦しみにあえぐ私たちを救済せずにはおかぬという誓願をお持ちですので、私たち衆生を表す蕾の蓮の花をしっかと手に持っておられるのです。

次に「革堂の……」には、その音からして「かなう」「ものごとが成就する」の意が秘められており、また「庭の千草……」には、御本尊千手観音の千が伏せられていると思います。

和歌の解釈は素人ですが、「今は」というのは「今際」を意味しているようにも思います。また、「庭の千草」は秋の季語になるそうです。これらを総合すると、「いよいよ自分が死んでしまうという臨終の際になって、思い出されるのは革堂の庭の花々が咲き誇っている様子だ」、と解釈することもできるかもしれません。

革堂へのアクセス

革堂ホームページに詳しいアクセス情報が掲載されています。

kaudau.jp(2021.5.30閲覧)

公共交通機関

京阪「神宮丸太町駅」から徒歩約10分。

お車

第二京阪道路「鴨川西IC」から北に約20分。

駐車場なし。

境内周辺に民営の駐車場あり。

革堂データ

ご本尊 :千手観世音菩薩

宗派  :天台宗

霊場  :西国三十三所 第十九番札所

     洛陽三十三所観音霊場巡礼 第4番

     都七福神まいり 寿老人

所在地 :〒604-0991 京都市中京区寺町通竹屋町上ル行願寺門前町

電話番号:075-211-2770

拝観時間:8:00~16:30

拝観料 :無料       

URL   :https://kaudau.jp/

 

第十八番札所 六角堂 頂法寺 ◁ 第十九番札所 革堂 行願寺

第十九番札所 革堂 行願寺 ▷ 第二十番札所 善峯寺

南坊の巡礼記「革堂 行願寺」(2021.4.16)

この日は元々の予定では十九番の革堂 行願寺、二十番の善峯寺、二十一番の穴太寺の3か寺を巡礼する予定でしたが、あいにく天気は雨の予報でした。午前中は何とか持つという予報だったので、とりあえず革堂を回ってから考えようと思っていたのですが……。

7時50分に家を出発し、高速に乗ると、何ともう降り始めてきました。しかも、まあまあのレベルの雨です。これはマズイなあ、と思いつつ、高速を降ります。混んでいる下道を北上する間も、雨は止む気配がありませんでした。

また、革堂には駐車場がないんですよね。事前のリサーチで目星をつけていたのは三井のリパーク河原町丸太町南駐車場でした。料金は30分300円でさすが京都の一等地、という感じですが、革堂に近いことが選んだ理由です。

というわけで、車を停めます。雨で気温も低いのか、トイレに行きたくなってきました。革堂にあるのかどうか分からなかったのですが、前にこの辺に来たときに御所の南東側の歩道にトイレがあったことを知っていたので、そこを利用しました。

さて、車に戻り身支度を整えて革堂を目指します。奇跡的に雨が止み、傘を指す必要がなくなりました。

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※革堂山門

路面が結構濡れているのがお分かりいただけるかと思います。本当にお参りに行くまでは、かなり降っていました。やめようかと思ったくらいです。

山門をくぐってみて思ったのは、もしかすると札所で一番小さなお寺かも?ということでした。京都の町中ということもありますが、六角堂と同じかそれより小さいような気がしました。

山門をくぐるともうすぐに本堂なので、納経をさせていただきます。意外と参拝者も多いです。地元と思われるお婆さまが熱心に参拝しておられました。

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※本堂

本堂内陣に入れそうな感じがしましたが、一応勝手に入ることはやめて、自重しておきました。後で納経所の方にうかがうと、やはり入ってはいけなかったようです。特別拝観のときだけ内陣に入れるそうです。

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※本堂外陣

というわけで、外陣から納経をいたしました。ご本尊お前立ちのお姿は、遠くに見ることができます。

私の前に納経所に並んでおられたのは、母娘連れのお二人でした。親子で共通の趣味を持つ、というのもいいものですね。結構いろいろなものにご宝印をいただいていたようでした。納経所の方は尼僧の方なのでしょうか、物腰がやわらかく、とても感じのいい方でした。 

さて、境内を一回りしてみますが、説明板等もないため、何が見所なのかよく分かりません。

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※百体地蔵尊

加茂大明神の五輪塔の横には、百体地蔵尊がありました。おそらく制作年代もバラバラだと思います。中にはかなり古そうなお地蔵さまもありました。

そんななかで、私が感心したのはこれです。

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※フジバカマの鉢植え

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※フジバカマの説明板

どうやら、京都市の動植物の保全・再生を目指す取り組みのようです。フジバカマという植物をたくさん育てておられました。NHK出版の『みんなの趣味の園芸』ホームページ*5によれば、フジバカマは「秋の七草」の一つで、『万葉集』の時代から日本人に親しまれてきた花だそうです。現在は絶滅危惧種になっているとのことで、革堂では栽培に力を入れておられるようでした。

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※太陽が少し覗いている

小さなお寺ですので、30分程度で参拝は終了です。

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※革堂山門PartⅡ

到着時の写真と見比べていただくと、空の様子が全然違うことが分かります。これなら二十番善峯寺もいけるんじゃないか?とも思われましたが、ここに来るまでにもうこの日は革堂だけにする、と決めていましたので、二十番以降は次回に回すことにしました。

車に戻り、駐車料金を支払います。実は事前のリサーチの際、勝手に20分200円だと思っていたのですが、30分300円なので600円払わないといけませんでした。

問題はここからで、JR西日本のキャンペーン「駅からはじまる西国三十三所めぐり スタンプラリー」のスタンプをもらいに行かないといけません。十五番今熊野観音寺、十六番清水寺、十七番六波羅蜜寺は違う駅でももらえるのですが、十八番六角堂と十九番革堂京都駅でしかスタンプがもらえないんですね。ですので、私の作戦としても十五番からの5か寺のスタンプは、まとめて京都駅でもらおうと思っていました。ですので、ここから京都駅に向かいます。

通勤ラッシュの時間も過ぎているので、道はそれほど混んでいません。30分ほどで京都駅の方に着きます。それで、車をどこに停めるか、ということになります。私はイオンユーザーなので、イオンモールKYOTOに停めてみることにしました。前回、六角堂からの帰り道に、イオンの駐車場に入っていく車を偶然にも見ていたので、簡単に入ることができました。

ここから意外と歩かなければなりません。イオンの北側に出て八条通を横断し、近鉄名店街を通って線路を越える高架のところに行きます。ここにも改札口があるので聞いてみると、烏丸中央口へ行ってくれとのことです。まあ、予想どおりです。そこからさらにテクテクと歩いて、烏丸中央口に着きました。イオンの駐車場から10分近くは歩いていると思います。

無事にスタンプも押してもらうことができ、本日の巡礼は終了です。次回は、予定を変更して二十番善峯寺、二十一番穴太寺、二十二番総持寺と回ろうと思います。

というわけで皆さんも! Let’s start the Pilgrimage West!

 

南坊の巡礼記「六角堂 頂法寺」(2021.4.15) ◁ 南坊の巡礼記「革堂 行願寺」(2021.4.16)

南坊の巡礼記「革堂 行願寺」(2021.4.16) ▷ 南坊の巡礼記「善峯寺」(2021.4.21)

 

最終更新:2021.6.3

*1:革堂 行願寺ホームページ「お知らせ」2021.5.30閲覧

*2:五来重『西国巡礼の寺』角川書店(1996)

*3:白洲正子『西国巡礼』講談社(1999)

*4:前田孝道『御詠歌とともに歩む 西国巡礼のすすめ』朱鷺書房(1997)

*5:NHK出版『みんなの趣味の園芸』ホームページ「フジバカマ」2021.5.30閲覧