西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

西国三十三所 2021年特別拝観リレー 紀三井寺~粉河寺~岡寺の秘仏を拝観してきました! 

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岡寺本堂

最終更新:2021.5.2

2021年4月9日、二番札所金剛宝寺紀三井寺)、三番札所粉河寺、七番札所岡寺特別拝観に行ってきました!いずれも前回お参りしたときは拝顔がかなわなかったのですが、今回は秘仏と言われる仏さまにお会いできてとても貴重な体験となりました!

未レポの札所がたまっているのですが、特別拝観の情報は早めにお伝えするべきなので、このタイミングで公開させていただきます。

なお、西国三十三所の2021年特別拝観スケジュールは、下記のリンクをご覧ください。

www.saigoku-ohenro.com

南坊の巡礼記(2021.4.9)

かねてから計画していたとおり、前回の巡礼では拝顔できなかった仏さまにお会いするため、特別拝観を実施中のお寺を順番に巡ります。少し風が冷たい感じでしたが、お天気もよく絶好の巡礼日和でした。

二番札所 金剛宝寺(紀三井寺) 秘仏ご本尊ご開帳

9時40分ごろ紀三井寺に到着しました。紀三井寺の駐車場は裏門側になるので、この日は楼門に近い紀州紀三井寺駐車場に車を停めます。株式会社はやし経営ですが、これは紀三井寺ガーデンホテルはやしを経営している会社なのでしょう。従来は駐車料金が500円だったようですが、このときは400円でした(平日だから?値下げ?未確認)。楼門前の拝観受付にて200円の参拝料をお支払いし、結縁坂を上ります。

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※この日の結縁坂

さて、前回の参拝であちこちお参りさせていただいていますので、本日はメインの特別拝観を優先します。

私が本堂でお勤めをさせていただいている間に、3人の方が特別拝観の受付に並んでおられました。少し時間は早かったのですが、10時前には受付を開けていただくことができ、4番目に入堂です。普段は本堂内陣は入れないので、中に入らせていただくのはこれが初めてです。受付で特別拝観料1000円を支払い、熱を測ります。コロナ禍ですので、必要な対策ですね。靴を脱いで上がらせていただきます。内陣を通り裏手の大光明殿へ行き、裏から回って元のところへ戻ってくるという拝観スタイルです。

内陣内部には、多くの仏像が安置されています。詳しくは下記リンクをご覧ください。

不思議だなと感じたのは、お厨子の東西を四天王のうち増長天像(江戸時代)と持国天像(平安時代)がお守りしていることです。四天王ですから、本来は四尊のはずです。と思ったら、ご本尊が安置されている大光明殿に毘沙門天像(平安時代)はありました。残る一尊の広目天像は、どこかのタイミングで逸失してしまったのかもしれません。

また、同じく内陣の阿弥陀如来坐像(平安時代)、薬師如来坐像(平安~鎌倉時代)も歴史を感じさせます。秘仏であるご本尊十一面観世音菩薩や秘龕仏ひがんぶつ千手観世音菩薩の代わりに普段の礼拝用に使用されたと推測される十一面観音(室町時代)や千手観世音菩薩(南北朝時代)もかなりのものです。

さて、いよいよ大光明殿に入ります。正面に二尊、他を圧する存在感でご拝顔できる仏さまがいらっしゃいます。両尊とも50年に一度開扉される秘仏で、昨年のご開扉がコロナ禍で中断されたため、今年も特別にご開扉されています。

左が秘仏本尊十一面観世音菩薩立像で、紀三井寺を開山した為光上人のお手彫りと伝えられています。樟の一木彫りで、国指定の重要文化財です。10世紀初期の平安時代の作風とのことです。

右が秘龕仏千手観世音菩薩立像で、同じく為光上人のお手彫りと伝えられています。これも樟の一木彫で、国指定の重要文化財です。やはり平安時代の10世紀後半から11世紀の作風とのことです。

二尊の特徴の違いがまた目を引きます。十一面観世音菩薩立像は、とても大きなお顔をされておられ、約5.5等身くらいでしょうか。その大きなお顔で優しく何かを語りかけてこられているように感じます。一方の千手観世音菩薩立像は対照的に小さなお顔をしておられます。しかし非常にキリッと引き締まったお顔をしておられ、こちらは力強く訴えかけるようなご表情です。

ご本尊秘龕仏の指からはご縁を結ぶ紐が結ばれていますので、アルコールで除菌をしてから紐を握らせていただきました。

この二尊の両脇に帝釈天立像、梵天立像が侍っておられます。いずれも10~11世紀の制作で、秘仏本尊の脇士として伝えられているそうですが、像容が異なっていることから同一の作者ではないと考えられる、とのことです。また、二尊ともに天部像というよりも菩薩像と呼んでも過言ではないような像のお姿となっています。

左の端には上述の毘沙門天像がおられます。右端は秘仏ご本尊お前立ちともいわれる十一面観世音菩薩立像がおられます。少しうつむいておられるような上半身と、大きく造られている下半身があいまって、観音さまの母性を表すようなお姿となっています。

本堂内陣大光明殿は撮影禁止で、写真でお見せできないのが残念ですが、やはり自らの目でご拝顔なさるのが一番だと思います。ぜひ、ご参拝ください。

10時30分ごろ、紀三井寺を後にします。次は粉河寺を目指します。

なお、詳しい紀三井寺の情報は「西国三十三所 第二番札所 金剛宝寺 ~『万葉集』にも詠われた和歌の浦を望む紀三井寺~」をご参照ください。

紀三井寺秘仏御本尊「よみがえり御開帳」データ

期間   :2021年4月8日(木)~5月29日(土)

開帳時間 :10:00~16:00

特別拝観料:1000円

三番札所 粉河寺 北面観音特別拝観

京奈和道を使えばすぐ着きますが、久しぶりに県道7号線粉河加太線を走ります。1時間程度走り、11時30分ごろに到着です。大門の右側を通り、境内の右手前側にある粉河寺駐車場に車を停めます。平日だったため駐車場の係の方は外に出ておられず、管理しておられるかにい土産物店のお母さまに声をおかけします。駐車料金の支払いは帰りでよい、とのことでしたので、いざ本堂へ参拝に行きます。

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※粉河寺本堂

本日の目的は北面観音のご拝顔ですので、お勤めを済ませた後、本堂内陣へと入ります。靴を脱ぎ、受付で拝観料700円を支払います。普段も内陣へは400円を支払って入ることはできますので、以前参拝したときに入らせていただいております。当然内陣は撮影禁止ですが、特別拝観の対象である北面観音さまのお姿は下記リンクの下部に写真が掲載されていますので、ご覧ください。

内内陣の周りをぐるっと歩き、裏手へ回ります。素木で臨時のスロープが作られており、お寺の方が見守っておられます。スロープを上りきると、いらっしゃいました。粉河寺北面観音さま、千手観音立像です。ぱっと見た印象は、小さいながらも神々しい、いや仏々しいお姿だということです。とくに千手の部分の精緻さは見事で、細い指の一本一本まで息遣いが感じられるようです。

受付でいただいた案内書きには、この北面観音の特徴が述べられています。なお、和歌山県立博物館の大河内智之さんによる文章です。以下に少し引用します。

四十二臂のうち合掌手がっしょうしゅと宝鉢手ほうはつしゅを除く三十八本の脇手にはたなごころに眼があらわされていますが、全て玉眼ぎょくがん仕上げ(水晶製の眼)とする入念の作となっています。像の表面は剥落が甚大であるものの、漆下地を施して漆箔しっぱく仕上げとし、面相部に古い金箔が比較的良好に残っています。腰から下にまとったくんには白色にて八稜段花文はちりょうだんかもん、亀甲繋文きっこうつなぎもん、截金きりかねにて雷文菱らいもんひし、麻葉あさばなどの文様が施されています。

私も今まであまり仏像の衣裳の文様に着目したことはなかったのですが、これだけ鮮やかに残っていると、自然と目が行きました。

さらに、案内書きによると、元々は平安時代後期に作成された十一面観音であったものを、後代に上半身の改造を行い、千手観音像に変更しているそうです。これはいわゆるお前立ちではありませんが、秘仏ご本尊に代わり参詣者がお参りすることができる後戸本尊として、霊験あらたかな千手千眼観音である粉河観音を表そうとしたのではないか、とのことです。

絶対秘仏というご本尊もそうですが、この北面観音もミステリアスな存在ですね。

12時10分ごろに粉河寺を出発し岡寺を目指します。お腹が空いてきたので、京奈和道途中にあるかつらぎPAで和歌山ラーメンと柿の葉寿司のセット(1000円)をいただきました。いついただいても柿の葉寿司はさっぱりしていておいしいですね。

なお、詳しい粉河寺の情報は、「西国三十三所 第三番札所 粉河寺 ~霊験あらたかな童男の縁起絵巻~」をご参照ください。

粉河寺北面観音特別拝観データ

期間   :2021年3月27日(土)~5月5日(水)

開帳時間 :9:00~16:00

特別拝観料:700円

※期間限定ご朱印あり

七番札所 岡寺 本堂内陣特別拝観

京奈和道を御所ICで下り、東に向かいます。古代都市飛鳥の東に岡寺があります。以前参拝したときは、民営の岡寺門前駐車場(実は門前ではない)に停めましたが、今回はお寺の臨時駐車場(無料)に停めます。臨時と書いてありますが、いつでも停めてよさそうな感じです。

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※岡寺臨時駐車場

ただ、ここに至るまでの道筋が車1台ずつしか通れない離合困難な道ですので、車の運転に自信のない方は民営の岡寺民営駐車場(500円)をご利用された方が無難です。

駐車場に停めて驚いたのは、意外と車が多い!ということです。紀三井寺粉河寺は平日ということもあり空いているのは当然だと思いましたが、ここはちょっとびっくりしました。それもそのはず、後でも触れますがシャクナゲが見ごろを迎えていたのでした。

受付で入山料400円をお支払いし、境内へ入っていきます。ここは日本で最初の厄除け寺としても知られています。

まずは本堂でお勤めを済ませます。トップ画像にあるとおり、すでにお姿を拝することができます。3月14日にお参りしたときには、お姿を拝した記憶がありませんので、普段は扉を閉めておられるのでしょうか。

早速内陣へ入らせていただきます。やはり靴を脱いで上がりますが、ここは内陣の拝観料は無料でした。

中では、ご本尊の如意輪観音座像のお姿を拝させていただきました。圧倒的な迫力です。やはり写真をとることはできませんので、ご本尊のお姿は下記リンクからご覧ください。

何がすごいかというと、その大きさです。塑像そぞうですから、土でできているわけです。寺伝によると、弘法大師三国(インド・中国・日本)の土を使って制作したそうで、塑像としては最大とのことです。それにしても、これだけの大きさの土の像は寡聞にして聞いたことがありません。像高は4.85メートルとのことですから、3階くらいに相当するでしょうか。また、如意輪観世音菩薩像としては最古とされますが、個人的には如来像と言ってもよいくらいではないかと思います。

内内陣の周りを回って裏手に行くと、小さな如意輪観世音菩薩半跏思惟はんかしゆい像がおられます。大きさは31.2cmです。本物は京都国立博物館に寄託中ということで、岡寺にあるのはご分身とのことです。実は本物は元のご本尊ともされ、現在のご本尊塑像の中に胎内仏として納められていたそうです。

各札所を回っていると、現在のご本尊はわりと立派なものが多いですが、元々のご本尊は小さい仏像であることが多いように思います。これについて、民俗学者の五来重さんは以下のように述べておられます*1

二月堂のお水取りの本尊さんも、小観音さんが胎内仏にありまして、大観音が岩盤の上に立っています。そこに本堂ができ、その周りに礼堂ができて、外陣があるわけです。

石山寺正堂がもとのお堂です。

(中略)

本尊は岩盤の上に立っています。山岳信仰なり庶民信仰のお寺には、平地のお寺とは違ったタイプがありますが、その一つが岩の上に立っている本尊です。これはいうまでもなく、山の中で修行しておりますと、建物があるわけではありませんから、石の上に本尊さん、あるいは厨子を置いて、そこでお勤めをしました。

(中略)

考えてみると、遊行者はなるべく小さいポータブルな仏像、あるいは仏像の一部をもって歩きました。それを木の切り株にでも載せたら、仏像として拝むことができます。謎を解いてみれば、そういうものなのです。石山寺本尊についても、いろいろな考え方ができますが、山岳信仰が生み出した笈仏おいぼとけがもとだと考えられます。 

石山寺に関する記述ではありますが、山岳信仰の修験者が、持ち運びできる仏像を拝んでいたというのは、この岡寺の元のご本尊の姿を見てなるほどと思いました。南法華寺にも、このような小さな仏像がいくつも祀られていました。

元々は立派な伽藍などはなかったでしょうから、修験者一人一人が自ら仏像を運び、拝んでいたのでしょう。来往が多くなってきた行場には、改めてお堂が建設され、やがてそれが立派なお寺となり、大きなご本尊を置くようになって、というように、ただの行場から霊場寺院となっていく経緯が想像できます。

内内陣への扉が開かれており、現在のご本尊の分身ともされるご宝珠が飾られています。コロナ禍で触ることができませんが、以前は触ることで観音さまとのご縁を結ぶことができたようです。

外に出ると、本堂より奥ではシャクナゲが咲き誇っていました。

f:id:nanbo-takayama:20210411131548j:plain※奥之院入り口f:id:nanbo-takayama:20210411132007j:plain※奥之院手前
f:id:nanbo-takayama:20210411132107j:plain※奥之院側から本堂側を望む

f:id:nanbo-takayama:20210411131747j:plain※しゃくなげの道から望む本堂

中学2年生のときに音楽のテストでシャクナゲを漢字で書いたのですが、「石楠花」と書くべきところを間違って「石楠化」と書いたことがありました。シャクナゲも花なんですから、最後が「」なるのは当然のように思います。思えばつまらない凡ミスをしたものです。今となってはいい?思い出ですが。

たっぷり、1時間ほどかけて境内を回らせていただきました。

なお、詳しい岡寺の情報は、近日公開予定です。

岡寺本堂内々陣御扉特別開扉データ

期間   :2021年4月1日(木)~6月30日(水)

開帳時間 :8:30~17:00

特別拝観料:無料(入山料は400円)

 

三ヶ寺ともゆっくりと拝観することができてよかったです。やはり秘仏とされる仏さまには、言葉には表しきれない魅力がありますね。

というわけで皆さんも! Let's start the Pilgrimage West!

*1:五来重『西国巡礼の寺』角川書店(1996)