西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

四国八十八ヶ所 2021年夏コロナ禍におけるお遍路の状況について

f:id:nanbo-takayama:20210901153040j:plain

おへんろ交流サロン臨時休館のお知らせ

先日ご報告させていただいたとおり、私は2021年7月20日(火)から8月29日(日)の期間で四国八十八ヶ所を巡ってまいりました。今後それらの詳細なレポートをUPしていく予定です。ただ、コロナ禍という特殊な状況でもあり、これからお遍路をスタートしようと考えている方のためにも、レポートをUPしていく前に2021年夏の四国の状況を概説しておこうと思います。

コロナの状況

まず、コロナウィルス感染者数の動向について見ておきたいと思います。なお、数字はNHKニュース・防災アプリから引用しております。

 

2021年7月20日(火)

 大阪府 313人(まん延防止等重点措置発令中)

 徳島県 6人

 高知県 8人

 愛媛県 4人

 香川県 4人

 

2021年8月29日(日)

 大阪府 2389人(8/2以降緊急事態宣言発令中) 

 徳島県 59人

 高知県 54人(8/27以降まん延防止等重点措置発令中)

 愛媛県 37人(8/20以降まん延防止等重点措置発令中)

 香川県 55人(8/20以降まん延防止等重点措置発令中)

 

以上が、私の出発日と帰着日の感染者数の状況です。なお、いずれの府県も私がお遍路をまわっている間に過去最高の感染者数を記録しております。それが以下の数字です。

 

 大阪府 8/26 2829人

 徳島県 8/26 64人

 高知県 8/25 111人

 愛媛県 8/19 102人

 香川県 8/19 111人

 

ただし、9月1日現在で愛媛県と香川県は明らかに減少傾向となっており、早めにまん延防止等重点措置を発令したのが功を奏していると言えそうです。大阪府・徳島県・高知県はまだ予断をゆるさない状況です。とくに高知県は、人口が少ないにもかかわらず、1日の感染者数が111人を記録していることが心配されます。

四国はこれまで新型コロナの感染拡大を比較的封じ込めてきた地域でしたが、このいわゆる第4波では、全国的な感染拡大の渦に巻き込まれていると言えそうです。

つまり何が言いたいかというと、現在緊急事態宣言が発令されている地域から四国を訪問することは避けるべきである、ということです。

私もお遍路中、「どこから来たの?」ということをよく聞かれました。あちらの方は悪気があって聞かれているわけではありません。私の感触でも、遠いところをようこそ、という気持ちで聞かれている感じでした。ただ、こちらがやはり答えにくいところがあります。「大阪です」とは答えますが、その後つづけて、「もう四国に来て15日目になります」など、必ず何日目かを言っていました。そうすることで、安心していただけると思ったからです。

これは私の体験ではありませんが、お遍路中に42番の佛木寺で一緒になったKさんは、高知県をまわっているときにブツブツと文句を言われる方に遭遇したそうです。「何でこんなときにお遍路に来るんだ」というようなことを、聞こえる程度に小さな声で言っておられたということです。四国の方のみなさんがお遍路のことを快く思ってくださっているわけではないのです。

私が四国に出発した当初は、いわゆる「下りまん防」ということで、緊急事態宣言が解除された後のまん延防止等重点措置が発令されていたわけです。どちらかと言うと下火に向かっている状況でした。移動の制限についてもとくにまだ何も言われていませんでした。

しかし、今は明らかにその時とは状況が異なります。やはりせっかくのお遍路で、自分がコロナウィルスのキャリアになってしまっては、何の意味もありません。ですから、お遍路に行くかどうかはよくよく慎重に考えていただいて、不要不急かどうかはご自身で判断していただきたいと思います。

宿の状況

私が基本的にホテルに宿泊したことは以前にお伝えしたとおりです。私は6月8日にすべての宿を予約したのですが、結論から言うとこれが正解でした。

実は、いわゆるお遍路宿というのは、休業されているところが結構あるようです。実際、私も17番の井戸寺の前の松本屋さんが休業されているのは拝見いたしました。また、これも上述のKさんによれば、県外の方は泊めない、という方針をとっておられる宿もあるようです。お遍路宿というのは、お遍路さん同士の交流ができる点が魅力です。逆に言うと感染拡大の温床となる危険性もありますので、当然の措置だと思います。

私が泊まったシティホテルやビジネスホテルは、とくにコロナのせいで休業している、というところはなかったように思いますし、どこから来た人でも泊めてくれました。

宿坊は、やっておられないところもあるかもしれません。私の聞いた話では、26番の金剛頂寺は宿坊はやっているけれども、素泊まりのみ、ということだったそうです。私が宿泊した、75番善通寺の宿坊いろは会館も素泊まりだけでした。

飲食店の状況

徳島県の阿南市にあった居酒屋では、当時緊急事態宣言が発令されていた沖縄県のお客さんはお断りしていました。なお、私も住所等を用紙に記入しないといけませんでした。かなり念入りな対策だったと思います。

お遍路さんを当て込んでいる飲食店などは、休業しているところも多かったと思います。69番の観音寺のカフェなんかも、やっていませんでした。お寺で飲食店のようなものが開かれているところはなかったように思います。

最後は高松市に4泊したのですが、まん延防止等重点措置が発令されているということもあり、休業されている飲食店も多かったです。結局、4日連続夕飯はコンビニ弁当となってしまいました。

バスの状況

私は歩きで四国八十八ヶ所をすべて回りましたが、宿への往復だけはローカル路線バスを利用しました。結論として、混んでいたバスは1本もなかったです。10人以上乗っていたということもなかったかもしれません。これはコロナ禍関係なく、四国ではもともと車社会になっており、路線バスの利用者が減少しているためだと思われます。

一方、高松から高速バスを利用して大阪まで戻ってきましたが、高速バスは明らかに減便されており、特別ダイヤが組まれていました。また、定員も割合は分かりませんが減少されています。

お接待の状況

他の方のブログ等を拝見していると、結構お接待を受けている様子が書かれていましたが、私の場合はそんなに多くはなかったと思います。4~5日に1回程度だったでしょうか。基本的に何か物をいただきました。お金をいただいたこともありました。

車のお接待はまったくお声がかかりませんでした。ただ、最初の徳島で一部ご一緒させていただいたHさんは車のお接待を受けたそうです。

お接待所と呼ばれるようなところはことごとく閉鎖されていました。そういったところでお世話になったと言えば、高知県でお父さんが個人的にやっておられるお接待所だけでした。地域の方でやっておられるようなところ、例えば三坂峠を降りていったところにある坂本屋さんのようなところは、まったくやっておられませんでした。

何しろ、おへんろ交流サロンですら臨時休館されていたくらいです。まったく地域の方との交流というのは望めない状況です。

遍路道の状況

率直に申し上げて、山道は荒れています。私は高知県に入ってからはなるべく山道はやめて、多少遠回りでもアスファルトの道を通るようにしたぐらいです。

徳島県はまだ比較的通る人が多いからでしょうか、それほど危険は感じませんでした。

高知県に入ると、ほとんど人が通っていないなあ、というのが分かるようになります。最初の3か寺以外は、ほぼ山道を通らなかったように思います。

愛媛県も、割と荒れています。三坂峠は、雨の後ということもあり道が川のようになっていました。横峰寺への湯浪からの登山道は大丈夫でした。ここも最初の階段が川になっていましたが、本当に最初の部分だけでした。横峰寺から香園寺へ行く山道が危険でした。倒木が多く、一部道が塞がれています。

香川県の山道はもともと広めに造られていることもあり、比較的安心して歩けました。ただ、屋島寺から下っていくところは、コロナ禍に関係なく細くて急なところですので、注意が必要です。

これは全般的に言えることですが、くもの巣は多いです。ちょうど私の顔の高さにつくられていることが多く、何度も顔にかかりました。また、10日近く雨が降り続いた時期がありましたが、その時期以降、毛虫も多かったです。

お遍路さんの数

はっきり言ってとても少ないです。もともと真夏は少ないらしいですが、コロナ禍ということもあり、ほとんどいません。それでもやはり徳島県では何人か交流を持たせてもらいましたが、高知県以降、各段に減りました。

おへんろ交流サロンは休業されていますが、住所などを書いてそこのポストに入れておけば四国八十八ヶ所遍路大使任命書はいただけます。実はその任命書が昨日届いたのですが、その番号が第57号となっていました。ということは、もしかすると2021年に歩いて遍路を結願した人は私を含めて57人しかいない、ということなのかもしれません。

団体さんもいません。私が団体さんと会ったのは、20番の鶴林寺の1回だけでした。

お寺の状況

7番の十楽寺が、5月17日(月)以降納経時間を短縮しておられます。納経時間は、12時~17時までとなっています。それ以外のお寺は、従来どおり7時~17時となっています。ただ、一部のお寺では参拝客をあまり快く思っていないようなふしがありました。

最後に

お遍路の醍醐味は、ズバリいろいろな方との出会い、ふれ合いにあると思います。

もちろん、お遍路とは宗教的な巡礼ですので、その目的のために行かれている方もおられます。そういった方は、出会いやふれ合いを求めて行かれているわけではないでしょう。しかし、苦楽を共にするお遍路の場では、出会う人、ふれ合う人との絆がより深まっていくのも事実でしょう。

そういった意味では、私はあまりお遍路の醍醐味を味わうことができませんでした。まず、歩いている方が少ないです。また、お接待所などが閉鎖されており、地域の方との交流も望めません。

ですから、出会いやふれ合いを求めておられる方は、今のコロナ禍ではお遍路に行かれない方がいいでしょう。

純粋に修行や宗教的な巡礼を求めている方にとっては、逆に非常にいい時期かもしれません。お寺の参拝者も少ないですし、静かにお参りすることができます。

以上のことを参考にしていただき、今後のお遍路の計画に役立てていただければと思います。