西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

お遍路映画鑑賞① 映画「むすめ巡礼 流れの花」を観ました!

「むすめ巡礼 流れの花」の冒頭シーン ※スマホで撮影

勤労感謝の日であった2022年11月23日、突如としてお遍路に関する映像作品を見てみたいと思いたちました。そこで、Amazon Primeで適当な作品を探してみたところ、1956年の日活映画「むすめ巡礼 流れの花」という作品があったので、見てみました! 映画に関するレポートを書くのは初めてなので、スタイルを確立しないといけないですね……。

日活「むすめ巡礼 流れの花」鑑賞レポート

お話は、お遍路さんをモチーフにした人情話といったところです。

映画について

「むすめ巡礼 流れの花」

映画情報

製作国:日本

製作 :日活

配給 :日活

製作年:1956年

公開日:1956年7月31日

データ:モノクロ/70分

スタッフ

監督 :森永健次郎

脚本 :陶山鉄 田中研

音楽 :長津義司

 

その他スタッフ

撮影/山崎安一郎 照明/高橋勇 録音/米津次男 美術/坂口武玄 編集/近藤光雄 助監督/河辺和夫 製作主任/加東義 振付/柳寿子 

キャスト

みどり :浅丘ルリ子

山野良夫:青山恭二

おいね :坪内美詠子

山野あや:藤代鮎子

 

その他キャスト

汐見洋 久松晃 紀原耕 小泉郁之助 鈴木三右衛門 紅沢葉子 福田とよ 菊野明子 久世まゆみ 星野晶子 田中筆子 千代京二 村上和也 高田栄子 森みどり 横田陽子 武石征雄(劇団あすなろ) 玉木真理子(劇団あすなろ)

あらすじ

絵のように美しい瀬戸内海の島々、穏やかな海面を走る連絡船には観光客らに交じって白装束の巡礼者たちがいた。その中の一人であるまだ十代の娘・みどりは赤ん坊の頃に寺に捨てられた過去があり、東京の育ての親の元を離れてはるばる四国まで訪ねてきたのだった。八十八か所の札所を回って旅する内に生み親の行方を知りたいと思っているみどりは、同じ連絡船に乗り合わせた婦人・いねと出会う。いねもまた四国への修学旅行中に不慮の事故で死んだ娘の思い出を抱えて巡礼を続けていた。行動を共にする内に、みどりといねの間には本当の母娘以上の絆が生まれていく。旅の途中で知り合った学生・良夫とも仲良くなり、みどりは親切な二人に囲まれて幸せなひと時を送っていた。そんな折、ある札所の住職からみどりの母についての報せが入る…。

※NIKKATSUホームページ*1より

映画を見て

映画を見て、思ったところを書いていきます。

純粋な感想(ネタバレもあるかも)

1時間少々の映画ということで、割と気軽に見ることができました。実は見る前は「シン・ウルトラマン」を見ようかどうしようか迷っていたのですが、2時間映画だと結構時間を食うんですよね……。やはりきちんと映画を見ようと思ったら、午前中には用事を終わらせて、ゴゴニくらいの感覚で(※ゴゴイチはスケジュール的に苦しい。洗い物などして休憩することを考えると……)見たいところです。

ということから、70分程度の映画なので、よかったと思います。

感想は、純粋に面白かったと思います。ただ、お遍路はあくまでドラマのツールでしかなく、主題は人情ものだと言えるでしょう。

人間にとって、永遠のテーマというのがいくつかあると思います。男女の友情は成り立つのか、鶏と卵はどちらが先なのか、といったものですね。

この映画では、育ての親をとるか実の親をとるか、といったところでしょうか。

私ならば、育ての親をとります。夫婦というのは血はつながっていなくても、長年一緒に暮らすなかで家族となっていきます。育ての親もそれとまったく同じで、血はつながっていなくてもすでに家族になっているわけです。

ならば、実の親の元に行くことが必ず幸せを保証してくれるわけではないですよね。

主演の浅丘ルリ子さんは、当時まだ16歳ということで、なかなか可憐な雰囲気です。何となく安達祐実さんに雰囲気が似ているでしょうか。苦労している設定なのですが、行動はやはり少女のもので、見ていてハラハラします。また、泣いている演技などは、ちょっとまだまだ練習不足といったところでしょうか。

メイン共演の坪内美詠子さんは、白黒映画ということもあるでしょうが、陶器のような美しさのある女優さんでした。この方の表情の機微が素晴らしく、映画に深みを生んでくれていると思います。

少しだけ恋愛要素も入っています。相手役の青山恭二さんはこの映画の前年に東宝ニューフェイスに合格し、中央大学文学部を中退して映画界入りしたそうです。しかし、翌年にデビューした石原裕次郎さんのあおりをくらい、映画界では思ったほどの活躍はできなかったそうです。確かに、石原さんと比べるとやや無骨な印象を受けます。

個人的には、ストーリーよりも1950年代のお遍路事情を知ることができる歴史資料としての価値があるように思いました。

巡礼者目線の感想(ネタバレあり)

さて、突っ込みどころがいくつかあったので、それについて言及していきましょう。

お遍路に向かう際に、渦潮の辺りを船で渡っているのですが、いきなり「数年前に修学旅行生が渦に飲まれて亡くなった」といった情報が入ってきます。お遍路には死の影がつきまとうとはいえ、最初からえらい不吉やなと思いました。

その後、1番札所霊山寺に参拝しています。1番からスタートしたんだな、ということでなるほどと思ったのですが、その後がいけません。お寺の名前がはっきりと分かったものだけ並べていきます。 

 

1番札所霊山寺 → 86番札所志度寺 → 75番札所善通寺 → 76番札所金倉寺 → 73番札所出釈迦寺 → 道後温泉 → 88番札所大窪寺

 

いかがでしょうか……。

思わず、むちゃくちゃやないかい!と叫んでしまうところです。

1番はいいんですよ。やっぱり1番からスタートしたいですよね。

しかし、その次いきなり86番に行きますか?

さらに次の場面では、バスに乗って善通寺へ行くということで、途中でバスがエンストするなどのトラブルに見舞われながらも、実際に善通寺に行っていました。

見ていた私としては、この段階では、1番スタートの逆打ちかな?と思っていたわけです。

その次に金倉寺に行くのもいいでしょう。近在で順番を変えて巡るのもあり得ることですから。

その後、73番出釈迦寺で出生の秘密を知ることになるのですが、ここがいけません。なぜか設定上、お寺のすぐ裏は海となっています。

うーん……。Googleマップによると、出釈迦寺から最寄りの海岸までは5kmくらいはありそうです。どうなっているのでしょう。

その後、松山市にある道後温泉につかりながら「明日は最後のお寺だ」などとお話をされていました。道後温泉の最寄りのお寺は51番札所の石手寺なので、そこが最後なのかな?と思いきや、いきなりワープして88番札所大窪寺に行っていました。

道後温泉から大窪寺までは、Googleマップによると163kmあります。歩いても33時間で行けるそうですが、女性2人の足では翌日にたどり着くことは難しいでしょう。

しかも、その後、事情があって汽車に乗ることになり、また松山に戻ってくるのです。なかなか強引なロケーションです。

まあ、俳優さんたちをあまり長期のロケに拘束することができなかったため、香川県メイン、鳴門市・松山市で一部ロケといったところだったのでしょう。製作上の都合だとは思いますが、今だったら炎上するかもしれない案件ですね。

 

まあ、それはさておき、1950年代当時のお遍路事情を知るうえで貴重な史料だったことは確かでしょう。

主役の2人が一般家庭の前で托鉢をしている場面があります。おそらくご詠歌を唱えていて、それに対してご婦人がお米らしきものを袋に入れてくださっていました。

また、善根宿らしきものに泊まるシーンでは、宿のお姉さんとのやり取りで、早くお米を持ってきてください、と催促されているところがありました。おそらく、宿で出るご飯は宿泊者が托鉢などでいただいたもので賄っていたのだろうと思われます。

これは種田山頭火『四国遍路日記』でも同様の描写がありました。

行乞の功徳、昨日は銭四銭米四合、今日は銭二銭米五合、宿銭はどこでも木賃三十銭米五合代二十銭、米を持っていないと五十銭払わなければならない。

とすると、種田山頭火が四国遍路を行った1939年と「むすめ巡礼 流れの花」の撮影が行われた1956年では大きく変わっていないということが分かります。

戦争という惨禍をはさみながらも、遍路の風習、善根の風習はつづいていたということですね。

その他にも、お遍路さんの数が多いことにも驚かされます。これは映画の演出かもしれませんが、方々で歩いているお遍路さんの姿が映し出されていました。

あれだけの数のお遍路さんを受け入れ、養ってくれていた四国の、底力を目の当たりにしたような気がしました。

最後に

一度でもお遍路さんを経験されたことのある方なら、この映画は十二分に楽しめるのではないでしょうか。また、これからお遍路を始めるという方にとっても、お遍路の雰囲気を味わう素材としては十分だと思います。

もう一度見ようと思うかどうかは分かりませんが、お遍路の歴史資料として、非常に興味深い映画でした。

 

「むすめ巡礼 流れの花」

オススメ度:☆☆☆★★

最終更新:2022.12.4