本当はまだまだ書かないといけないお寺のレポートがあるのですが、とりあえず長いことブログを放置しておくこともできないので、書きやすい記事からアップしていきます。
やはりAmazon Prime Videoで「お遍路」で検索してヒットした「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!」を見てみました! 完全な娯楽映画ということで、何の屈託もなく見ることができる映画でした。
松竹「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!」鑑賞レポート
娯楽に振り切っている映画なので、学ぶべきところはお遍路の部分だけで、かなり偏っています。しかし、キャストの豪華さには驚きです。
映画について
映画情報
製作国:日本
製作 :松竹
配給 :松竹
製作年:2003年
公開日:2003年9月20日
データ:シネマスコープ/116分
スタッフ
監督 :朝原雄三
プロデューサー:瀬島光雄・深澤 宏
原作 :作/やまさき十三 画/北見けんいち
小学館「ビッグコミックオリジナル」連載
脚本 :山田洋次・朝間義隆
撮影 :近森眞史 (J.S.C.)
美術 :須江大輔
音楽 :岩代太郎
照明 :土山正人
録音 :鈴木 肇
編集 :石島 一秀
スチール:金田 正
企画協力:日本映像(株)
キャスト
浜崎伝助 :西田敏行
浜崎みち子:浅田美代子
浜崎鯉太郎:持丸加賀(子役)
中浜みさき:高島礼子
岩田千吉 :三宅裕司
中村の運転手:間寛平
曽我 :笑福亭仁鶴
鈴木久江 :奈良岡朋子
鈴木一之助:三國連太郎
その他キャスト(鈴木建設社員)
加藤武 國村隼 鶴田忍 小野武彦 笹野高史 斉藤洋介 西田尚美 さとう珠緒 濱口優(よゐこ) 谷啓
その他キャスト(その他)
中本賢 有野晋哉(よゐこ) 松村邦洋
あらすじ
佐々木課長がめでたく次長に昇格、後任は海外支社で活躍していたキレ者のエリート岩田課長(三宅裕司)だが、飲みに行った伝助は、岩田の意外な面を知ることに。多忙な日々に疲れ、四国八十八ヶ所のお遍路旅に、伝助を無理矢理誘った一之助。釣りをしたい伝助と、今回は真面目な一之助との間に、不穏な空気が流れる。やがて、旅先で出会った男まさりのトラック運転手・みさき(高島礼子)のハチキンぶりに圧倒される。みさきが高知でのお礼にと鈴木建設に立ち寄るも、あいにく伝助は出張中。代わりに相手をした岩田課長が、彼女にひと目惚れしてしまう。
心静かにお遍路旅を続けたいスーさんと、あわよくば釣りがしたいハマちゃん、に“釣りバカ”の高知のタクシー運転手(間寛平)が絡んで珍道中となる。四国ロケが効果を上げている。豪快な高知女性の典型“ハチキン”ぶりを高島礼子がうまく表現、三宅裕司とのロマンスがみどころになっている。本作より「サラリーマン専科」三部作の朝原雄三が監督に抜擢された。次長に昇進した佐々木課長の後任は、かつてみち子さんに恋心を抱いていた、岩田千吉(三宅裕司)。一見真面目な岩田課長だが、プライベートではブルースを愛する趣味人。しかし、寂しいバツイチでもある。
※松竹株式会社ホームページ「CINEMA CLASSICS『釣りバカ日誌』」より引用*1
映画を見て
映画を見て、思ったところを書いていきます。
純粋な感想(ネタバレもあるかも)
「釣りバカ日誌」シリーズを始めて見ました。その初めてが16作目(※なぜかスペシャル版と時代劇版をはさむため、今回の作品は14というバックナンバーがついているが16作目)ということで、すでにいろいろ関係性が出来上がってしまっており、ちょっとついていけないところもありました。何しろ、冒頭からの顛末があまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、ちょっとイヤな気持ちになるぐらいです。ハマちゃん(浜崎伝助)というキャラクターですが、人を食った言動が多すぎますね。
しかし、映画鑑賞を進めていくと、同時に憎まれないキャラ、愛されキャラという側面にも気づいてきました。人の懐にいとも簡単に飛び込んでしまう、こういったところは私にはないところなので、うらやましくもありました。
私のキャラクターはどちらかと言うと岩田千吉課長に近いでしょうか。映画の中で評されていた彼は、「真面目でいい人」というキャラクターでした。まあ自分で自分を「いい人」と言いたいわけではないですので、悪しからず。
この岩田課長が、映画の終盤思い切った行動に出ます。会社をやめて、みさきという女性を追いかけ、四国の、しかも小さな島に移住するのです(※ネタバレにもほどがある)。映画の序盤では外国帰りのエリートという位置づけだった彼のこの行動は、会社の重役や営業三課の部下など、周りには理解できないことでした。しかし鈴木社長は、遍路の旅で泊まった旅館の娘であったみさきと、社員である岩田課長が結ばれたことを、温かい気持ちで祝福したのでした。
私も昨年は一度仕事をやめ、お遍路の旅に出ました。この岩田課長の気持ちも少し分かるように思います。仕事の先に幸せがあるのか、他のところに幸せがあるのか。映画の冒頭でお遍路に出る際、スーさん(鈴木社長)が「今一度自分自身を、はっきりと見直してみる必要があるんじゃないかと思いましてね」とおっしゃってましたが、私もそのように感じていたのでした。
このエリート社員の岩田課長を演じているのが、三宅裕司さんです。全然エリートに見えない、いや、失礼。私がイメージするエリートというのは、背が高くて眼鏡をかけていて、ハンサムな感じなのです。
偶然の出会いから、生涯の伴侶となることになったのが、中浜みさき役の高島礼子さんです。2003年当時、39歳。うーん、おキレイですね。実生活では、すでに1999年に高知東生さんとご結婚済みでした。映画上ではバツイチ設定でしたが、2016年に私生活でもバツイチとなられたのは、周知のとおりです。
それにしても、高知東生さんと結婚されたから高知の女を演じることになったのか分かりませんが、高知に縁がありますね。しかも役名の苗字は中浜で、あのジョン万次郎を意識した苗字になっています(※ジョン万次郎は中浜村出身で、中浜万次郎と名乗ることも)。
営業三課の面々もユニークで、この映画に彩りを添えてくれています。よゐこの濱口優さんが演じる海老名は、ガンダムおたくで、デスクの上にガンプラをいっぱい置いています。その隣の女性、さとう珠緒さんが演じる鯛子は、バルーンアート?が大好きで、これまたデスクの上にたくさんの風船を置いています。ぬいぐるみもありました。ただ、演技力にはちょっと疑問符がつきます。
三課の中で目立っていたのは、やはりOLの洋子役を演じておられた西田尚美さんですね。当時32歳、黒縁眼鏡で目立たない印象になってはいますが、やはりその演技力には光るものがあります。NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(※2022年12月18日放送の「笑点」では、ナイツの塙宣之さんが漫才中、北朝鮮ネタで「キムキムエヴリバディ」とパロディ。他にも、「ちむどんどん」を「テポドンドン」と呼ぶ)での橘小しず役での名演も、記憶に新しいです。私個人としては、東宝映画「ゴジラ2000 ミレニアム」(1999)が印象に残っています。
それにしても、キャストがあまりにも豪華で驚きます。鈴木社長役の三國連太郎さんをはじめ、加藤武さん、國村隼さん、鶴田忍さん、小野武彦さん、笹野高史さん、斉藤洋介さん、谷啓さんなど、錚々たる顔ぶれで、大河ドラマ並の配役でした。さらに、橋本大二郎高知県知事(※当時)ご夫妻もギャラリーとして登場されます。監督ではありませんが、さすがは山田洋次さんの作品だと言えるでしょう。
また、お亡くなりになられている俳優の方のお元気な姿を見ることができるのもうれしい限りですね。谷啓さん(2010年)、三國連太郎さん(2013年)、加藤武さん(2015年)、笑福亭仁鶴師匠(2021年)。とくに、関西人である私にとっては、仁鶴師匠を久しぶりに拝顔し、うれしい気持ちになりました。
なお、関西人は大御所のお笑い芸人のことを、勝手に「師匠」と呼びます。その意味では、タクシーの運転手として出演している間寛平さんも寛平師匠です。こういう呼び方は、NSCの1期生であるダウンタウン世代以降は呼ばないのではないでしょうか。
実は最近、たまたまNSC1期生である、ハイヒールの漫才をテレビで見る機会がありました。相変わらず面白かったのですが、最後に「どうもありがと!」とヤンキーっぽく去っていくのがハイヒールの漫才の終わり方なんですよね。このやり方、おそらくは当時の関西の漫才界に対する挑戦状でもあったと思われます。「どうもありがとうございました」と一礼して去っていく、という漫才の様式に、一石を投げかけているのでしょう。言わば、反発心の現れだったと思われます。
ところが、そのハイヒールのお二人が漫才を始める前におっしゃっていたことがまた興味深かったです。すでにピン(※ソロ活動のこと)でもたくさんの番組を抱えているお二人が、なぜ未だに漫才を続け、劇場に立っているかということについて話しておられたのです。それによると、もう女性で漫才を続けている先輩がいなくなってしまった、ということでした。そのため、後進のために女性漫才師の最年長として漫才を続けているのだ、ということのようです。なるほど、年配の女性漫才師といって私がぱっと思いつくのは、今いくよ・くるよさん、若井小づえ・みどりさん、非常階段さん(※ハイヒールより2年後輩)くらいでしょうか……。皆さん、相方さんがお亡くなりになっています……。
ということから、劇場に立って漫才をしよう!と決心されたハイヒールのお二人です。大人への反発心を持ってネタをやっておられたのに、いつの間にか最長老の立場になっておられたわけです。
話が大幅に逸れました。
奇しくも、2作品連続で三國連太郎さんの映画を見ることになってしまいました。私はどちらかと言うと三國さんをあまり知らず、佐藤浩市さんの方に馴染みがあります。しかし、その目線で見ていても、三國さんと佐藤さんの仕草や笑い方が似ていることに驚かされます。本当に、親子というのは似ていくものなのですねえ。
巡礼者目線の感想(ネタバレあり)
「旅の重さ」(1972)から31年経っており、四国もだいぶ発展していることが感じられました。もはや、今と変わらない風景だと思われます。札所の雰囲気もそうでした。
訪れた札所は、31番札所の竹林寺、32番札所の禅師峰寺、38番札所の金剛福寺でした。竹林寺の石段の様子、20年近く経った今でもまるで変っていません。ただ、新しい納経所はまだ建っていなさそうでした。禅師峰寺から望む土佐湾の風景もあまり変わりがないように思います。38番の金剛福寺も、私が2020年、2021年と訪れた時に見たままでした。
ただ、「旅の重さ」(1972)と同じような田園風景も出てきました。遍路道かどうかは分かりませんが、四国の変わらない姿も見れたように思います。
それにしても、役柄とはいえスーさんは博識ですね。ところどころ、短歌や俳句を引用されています。最初に、ハマちゃんをお遍路に誘うシーンでは、吉井勇先生の「かくばかり 弱きこころを 癒すべき 薬草なきか 土佐の深山に」という短歌を引用していました。また、終盤で奥さんをお遍路に誘うシーンでは、鵜飼政一先生の「百薬に 優る遍路に 出でにけり」を引用しておられます。しかし結局、ハマちゃんは釣りのことしか頭になく「人選を誤ったようだ」とこぼす始末になりますし、奥さんは奥さんでお遍路に一切興味なしでした。
まあ、分かります。こういうのって、なぜか急に思わぬ形で発願するものなのです。かくいう私も、自分がお遍路をするとは、4年くらい前は夢にも思っていませんでしたから。
また、笑福亭仁鶴さんが演じる同業他社の社長曽我さんとのやり取りでは、『秘蔵法鑰』に収められている、弘法大師さまの「生まれ生まれ生まれ、生まれて生の始めに暗く、死に死に死に、死んで死の終りに冥し」という言葉も引用しています。
実はこれらの言葉や句は私もまったく知らなかったものばかりでしたので、今回の映画では少しは勉強させていただきました。
また、スーさんがハマちゃんにお遍路の意味を説くシーンでは、お遍路の本質をついた言葉を述べています。バックでは、団体さんがやはりご詠歌を唱えておられました。以下に引用します。
お四国というところはね、お遍路の人たちにだけ、お大師さん、つまりだね、空海さんの歩む稼業を認めてくれているところなんですから。そしてね、一度金剛杖を持って札所巡りに出た人たちには、老若男女、仕事や社会的地位の隔てなくだ、まったく平等なお遍路の一人として、御同行という尊敬の念を持って接してくれるというわけなんだよ。
ちなみに団体さんはご詠歌を唱えておられましたが、スーさんは我々?と同じように経本を見てお経を唱えておられました。
しかし、スーさんの持っている鈴は、本当にベルのような鈴でした。私は不勉強で、金剛杖を購入した際にもともと付いていた鈴をそのままずっと使っていましたが、四国八十八ヶ所霊場会のホームページ*2によると、持鈴の説明があります。どうやら、スーさんの持っている鈴の方が正解のようです。これは、確か「むすめ巡礼 流れの花」(1956)や「旅の重さ」(1972)でも使っていたように思います。早速、次回のお遍路からは持鈴を持っていきたいと思います。
ということで、お遍路関連の映画としては、ある程度学ぶところはあったように思います。次回、お遍路で各お寺を巡った際には、納経所の方にこの映画のことも聞いてみたいと思います。
最後に
映画としては、完全な娯楽映画でした。「釣りバカ日誌」ファンのみなさまや、釣り好きの方にお勧めでしょうか。個人的には、ハマちゃんのキャラクターがあまり好きになれなかったので、それほどいい映画であるとは思いませんでした。おそらく、私が二度と見ることはないと思います。ただ、三國連太郎さんの渋さや高島礼子さんの魅力など、見所はたくさんあったと思います。
オススメ度:☆☆☆★★
*1:松竹株式会社ホームページ「CINEMA CLASSICS『釣りバカ日誌』」2022.12.18閲覧
*2:四国八十八ヶ所霊場会ホームページ「遍路用品」2022.12.18閲覧