
四国八十八ヶ所の第23番札所は、医王山いおうざん無量寿院むりょうじゅいん薬王寺やくおうじです。第22番札所平等寺から山を越えて海岸線に沿って、20km以上歩いたところにあるお寺です。海を望む高台にあり、厄除けのお寺としても有名です。また、徳島県最後の札所となります。
薬王寺の巡礼情報
薬王寺は、四国八十八ヶ所の第23番札所となっています。第22番札所平等寺から20km以上離れており、山を越え、海岸線を歩いてようやくたどり着くお寺です。吉川英治先生の『鳴門秘帖』の舞台にもなっており、厄除けでも有名です。徳島県最後の札所であり、次の高知県の札所はここから80km以上先になります。
薬王寺の縁起
薬王寺の成立縁起は、薬王寺のホームページに記載されています。
yakuouji.net(2025.7.19閲覧)
それによりますと、薬王寺は、奈良時代の神亀3(726)年、行基菩薩が聖武天皇の勅願を受け、この地に巡錫して一寺を建立された、とされます。
平安時代に入り、弘仁6(815)年、弘法大師が42歳のとき、平城上皇の勅命によってご本尊の厄除薬師如来を刻まれました。また、嵯峨上皇、淳和天皇が厄除けの祈願をされました。
鎌倉時代に入り、土御門上皇は嘉禄2(1226)年に皇居として行在させられました。また後嵯峨天皇は寛元元(1243)年に伽藍の再建をされ、仁助親王が落慶法莛に入られたそうです。
薬王寺の見所
薬王寺の見所をご紹介します。
仁王門

※仁王門
薬王寺の山門、仁王門です。入母屋造で本瓦葺き、三間一戸八脚門となっています。江戸時代後期の天保6(1835)年、大工の槌谷悦藏によって建立されました。両脇後方には仁王像が安置されています。2012年に解体修理がおこなわれました。

※仁王像(阿形)
この仁王像は檜の寄木造で像高は2.3メートルあります。江戸時代後期の天保7(1836)年、大仏師塩釜高運・康信によって造られたそうです。美波町指定の有形文化財となっています。
「鳴門秘帖」碑

※「鳴門秘帖」碑
このお寺は、吉川英治先生の時代小説『鳴門秘帖』の舞台となりました。主人公とその追手が薬王寺の境内で出会い、やがて山裾にて大立ち回りとなります。『鳴門秘帖』では、薬王寺は次のように描写されています。
月光の底に沈んでいる二十八柱の大伽藍だいがらん、僧行基ぎょうきのひらくという医王山薬師如来やくしにょらいの広前ひろまえあたり、嫋々じょうじょうとしてもの淋しい遍路へんろの鈴りんが寂寞せきばくをゆすって鳴る……。
物語の展開上、どこかもの寂しい様子で描かれています。
「空海の風景」碑

※「空海の風景」碑
司馬遼太郎先生の歴史小説『空海の風景』に、薬王寺が登場するそうです。第三十二回(昭和50年度)芸術院恩賜賞文芸部門受賞作とのことですが、未読です。
本堂

※本堂
弘法大師の御作と伝わる厄除薬師如来をお祀りする本堂です。江戸時代前期の寛永16(1639)年、本堂を含めてほとんどが焼失しましたが、その後、再建されました。現在の本堂は、1908年に再建されたものだそうです。
なお、裏には裏堂があります。
大師堂

※大師堂
宝形造の本瓦葺きとなっており、江戸時代後期の文政3(1820)年に建立されました。室町時代の天文19(1550)年に造られた弘法大師坐像を中心として、龍猛・龍智・金剛智・不空・善無畏・一行・恵果の真言八祖坐像も祀られています。脇侍は江戸時代中期の享保9(1724)年に造られた持国天、毘沙門天の像が固めます。
地蔵堂

※地蔵堂
入母屋造で本瓦葺きの地蔵堂です。地蔵菩薩半迦座像、聖観音立像、弥勒菩薩が祀られています。また、不動明王立像も納められています。
随求塔と随求の鐘

※随求塔と随求の鐘
高さは一丈六尺、台石の幅が八尺あります。四方には玉垣を巡らし、その内側に平石を敷き詰めており、真言を唱えつつ行道する場所となっています。塔の中には、大随求菩薩と銀製の五寸二分の宝瓶に仏舎利数粒を入れて安置しているそうです。石材はすべて花崗岩です。
大随求菩薩のご真言には、災いと罪を払う功徳があるとされ、薬王寺では、ご真言を唱えて自分の数え年の数だけ鐘を叩き、厄災消除を願うころができます。
大随求菩薩のご真言は「おん ばらばら さんばら さんばら いんじりや びしゅだに うんうん ろろしゃれい そわか」です。
肺大師

※肺大師
本堂の裏からはラジウムを含んだ霊水が湧き出しており、肺病などの諸病に効くと言われています。祠の中には弘法大師の石像が祀られており、祠の足元から湧き出す水は枯れることがないそうです。
大楠

※大楠
薬王寺の本堂前には2樹の大楠が生えています。樹齢は600~700年と推定され、周囲は5.5メートルと5.9メートル、高さはいずれも29メートルほどあります。美波町の天然記念物に指定されています。
鎮守堂

※鎮守堂
山岳信仰で名高い北陸の白山神社のご神体、白山大権現をお祀りしています。
厄坂

※厄坂
山門から入ると、まずは女厄坂が33段を登り、つづいて男厄坂42段を登っていかないといけません。江戸時代後期の文化5(1808)年に現在の厄坂に改修されました。また、男女還暦厄坂61段は瑜祇塔落慶時に完成しました。
瑜祇塔

※瑜祇塔
1963年の9月に建立されました。ご本尊は金色五智如来です。瑜祇塔は真言宗所依の経典である『瑜祇経』の教理を形に現したものとされています。その教理とは、二つの相反するものの和合を説くものです。塔の上方には金剛智慧をあらわす五峯を示し、周囲に胎蔵の理論の表示である八柱を建て、これが不二を示すよう上の方が四角、下の方は円筒形の一重の塔となっています。
鐘楼堂

※鐘楼堂
現在の梵鐘とともに、1958年に吊り上げ式がおこなわれました。
薬王寺のご詠歌
ご詠歌とは、 四国八十八ヶ所の各霊場の特色を五・七・五・七・七の三十一文字で分かりやすく詠んだもので、民衆に各霊場の特色を分かりやすく教える意味合いがあります。
みなひとの やみぬるとしの やくおうじ
るりのくすりを あたえましませ
(皆人の 病みぬる年の 薬王寺
瑠璃の薬を あたえましませ)
漢字表記は一般社団法人 四国八十八ヶ所霊場会のホームページ*1によります。
薬王寺のご本尊は薬師如来です。薬師如来の別名は薬師瑠璃光如来ともいい、東方瑠璃光浄土におられるとされています*2。それゆえ、ご本尊である薬師如来に対して、「瑠璃の薬を 与えましませ」、つまり瑠璃の薬を与えてください、ということになります。
では、ご詠歌の前半部分はどうなるでしょうか。「皆人の」というのがよく分かりません。そのまま、誰でもみんなという意味なのかもしれません。「病みぬる年」というのは厄年を表していると思います。また、「薬王寺」という寺号と、「厄負う」が重ねられているように思います。
つまり、誰でも厄年になったら病を得やすいけれども、薬師如来さま、瑠璃のお薬をお与えください、ということでしょう。
薬王寺へのアクセス
薬王寺のホームページに詳しいアクセス情報が掲載されています。
yakuouji.net(2025.7.20閲覧)
公共交通機関
JR「日和佐駅」から徒歩約10分。
お車
徳島自動車道「徳島IC」から国道11号、55号線を南に約1時間10分走行、「薬王寺前」交差点を通過してすぐ右側。
駐車場あり。約500台。
薬王寺データ
ご本尊 :厄除薬師如来
宗派 :高野山真言宗
霊場 :四国八十八ヶ所 第23番札所
所在地 :〒779-2305 徳島県海部郡美波町奥河内字寺前285-1
電話番号:0884-77-0023
宿坊 :あり。(予約専用電話:0884-77-1138)
納経時間:8:00~17:00
拝観料 :無料
境内案内図
www.seichijunrei-shikokuhenro.jp(2025.7.21閲覧)
上記サイトの当該箇所に境内の案内図があります。
第22番 平等寺 ◁ 第23番 薬王寺 ▷ 第24番 最御崎寺
南坊の巡礼記「薬王寺」(2020.8.11)
14時半ごろ、平等寺の参拝を終え、車に乗り込みます。ここから第23番札所の薬王寺までは、車だと約23kmとされています。
ルートとしては、県道35号線、つづいて県道24号線を南下します。程なく、国道55号線に合流です。薬王寺は国道55号線に面していますので、このまま国道を南下していきます。
途中でコンビニに寄ったような気もしますが、よく憶えていません。15時ごろ、薬王寺の門前に到着しました。駐車場は門前を過ぎて少し進んだところ、右側にありました。非常に広い駐車場です。
実はこの薬王寺には、薬王寺温泉 湯元 醫王の湯という温泉施設もあるのです。ここに入る方もいらっしゃるのでしょう、とにかく広い駐車場になっています。
ただ、薬王寺さん自体も厄除けで全国的に有名らしいです。初詣の時などは、車でいっぱいになるのかもしれません。
車を停め、準備をして門前に向かいます。薬王寺さん頼りのお土産屋さんもあります。
門の方から見上げると、ずいぶん高低差のあるお寺だということが分かります。杖をつき、えっちらおっちらと登っていきました。本堂までは、かなり石段を登らないといけません。
何かの工事をやっていたようで、頭上注意と書かれていました。実際、クレーンが動いていたので、気をつけないと危ないな、と思いました。
この日はここで最後のつもりなので、本堂、大師堂でしっかりと納経をしました。本堂よりも高いレベルに瑜祇塔がありますが、この日は登ったか登らなかったか……。とにかく、5年も前のことなのであまり憶えていないですね。
納経所は下にあります。順路に従って降りていき、納経所に入りました。お坊さんらしき方に記帳・押印していただきました。これで薬王寺での参拝は終了ですね。
山門から出ていくと、ちょうど歩き遍路らしき2人組の青年がいました。歩きは大変だよなあと思いつつ、少しうらやましく感じました。やはり、時間がないとできないですからね。歩き遍路は実は最高の贅沢とも言われます。
さて、この日の参拝はすべて終了しました。車に戻ります。ここからは、ホテルに向かいます。記憶では確か阿南市のスーパーホテル阿南・市役所前に宿をとっていたはずです。車で向かいました。
17時ごろにはチェックインして、その後食事に出ました。駐車場は、早いもの勝ちということらしく、車で食事に出たら、その後は場所がなくなっている可能性もあったそうです。ただ、この日はそこまで混んでいなかったらしく、大丈夫でした。
夕食は、カレーハウス CoCo壱番屋 フジグラン阿南店でとりました。車だから来やすかったですが、歩きだとなかなかしんどいと思います。チェーン店ですから、安定のクオリティですね。
食後はすぐにホテルに戻り、大浴場に向かいました。ここは大浴場とはいうものの、カランが4つぐらいしかない実質的には中浴場ですね。ただ、温泉というのがありがたいです。
その後は部屋で翌日以降の計画を練り、早めに就寝しました。
宿情報
スーパーホテル阿南・市役所前
シングルルーム
宿泊費:7,300円?(記録がなく不明だが、翌年の実績)
室内に冷蔵庫・バス・トイレあり
WiFiあり
大浴場あり。温泉
洗濯機・乾燥機あり(5台)
洗濯機200円、乾燥機無料
アクセス:バス停から約5分
コンビニ:徒歩約10分弱
フロントスタッフなど人員は少ない
南坊の巡礼記「平等寺」(2020.8.11) ◁ 南坊の巡礼記「薬王寺」(2020.8.11)
南坊の巡礼記「薬王寺」(2020.8.11) ▷ 南坊の巡礼記「最御崎寺」(2020.8.12)
*1:一般社団法人四国八十八ヶ所霊場会ホームページ「各霊場の紹介『第二十三番』」2025.7.20閲覧
*2:やすらか庵ホームページ「真言宗『薬師如来とは-功徳と真言、瑠璃光浄土』」2025.7.20閲覧