西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

四国八十八ヶ所 第3番札所 金泉寺 ~見所は沙羅双樹と熊蜂? 長寿をもたらす黄金の井戸~

金泉寺仁王門

四国八十八ヶ所の第3番札所は、亀光山きこうざん釈迦院しゃかいん金泉寺こんせんじです。1番札所からも4km程しか離れておらず、阿讃山脈の南麓の平坦なところに札所が固まっています。金泉寺弘法大師が手ずから掘られた井戸の伝説が残っているお寺です。

金泉寺の巡礼情報

金泉寺は、四国八十八ヶ所の第3番札所となっています。1番からの距離は約4kmで、歩くだけなら1時間程度でたどり着けます。名前のとおり、弘法大師が掘り当てた泉の湧くお寺として有名です。お寺そのものが板野町指定の史跡となっています。

金泉寺の縁起

金泉寺はオリジナルのホームページを持っておられませんので、他の媒体の持つホームページから情報を集めることになります。そのなかで、金泉寺の成立縁起を最も詳しく伝えてくれているのは、一般社団法人四国八十八ヶ所霊場会のホームページです。

88shikokuhenro.jp(2024.4.20閲覧)

また、徳島県観光協会のホームページ「阿波ナビ」*1や四国遍路 聖地巡礼のホームページ*2を総合して簡単にまとめます。

 

金泉寺聖武天皇の勅願により行基菩薩が天平年間(729~749)に寺塔を建立し、「金光明寺」と命名されました。そのころのご本尊は高さ約91センチの釈迦如来像で、脇侍に阿弥陀如来、薬師如来の三尊像を安置して開基したということです。その後、平安時代の弘仁年間(810〜24)になって弘法大師が四国を巡錫された際、村の人たちが日照りに苦しんでいるのをご覧になり、この地に井戸を掘られました。この井戸から湧き出た水は霊水で、「長寿をもたらす黄金の井戸」とされたことから、寺名の「金光明寺」を改め、「金泉寺」としました。その後、鎌倉時代に亀山天皇(在位1259〜74)が法皇になり、弘法大師を篤く信仰されて各地の霊跡を巡拝され、金泉寺にもしばらくご滞在になりました。その間、京都の三十三間堂にならった同社を建立し、1,000の千手観音像をお祀りされ、背後の山を「亀山」と命名されました。これにより、山号が「亀光山」となりました。この堂舎には経蔵がおかれ、当時は学僧たちでにぎわったそうです。住所の「大寺」はその名残りということで、往時をしのばせてくれます。

 

亀山天皇が急にからんできているところが不思議な縁起です。吉野川南岸のお寺を含めて、この近辺の札所には他に亀山天皇がからんできている縁起はないように思います。これについては、民俗学者の五来重さん*3が一説を唱えておられます。

亀山天皇の亀をとって亀光山としたということで、光りものの縁起があったのだろうとおもいます。亀山法皇が再興したから亀光山の山号があるというよりは、むしろ亀光山の山号から亀山法皇の縁起ができたのでしょう。光りものがあった、海の亀だ、海の光だということから亀光山という山号が出たけれども、その縁起が失われてしまったのです。

「光」について言えば、2番札所の極楽寺も阿弥陀如来の後光に関する縁起がありました。もしかすると何か関係があるのかもしれません。

金泉寺の見所

金泉寺の見所をご紹介します。

仁王門

※仁王門

朱塗りの鮮やかな楼門です。

八角観音堂

※八角観音堂

八角形をした観音堂です。大師堂の手前にあります。

大師堂

※大師堂

扉が開いており、お大師さまを直接拝むことができます。

本堂

※本堂

釈迦如来を祀っている本堂です。本堂の裏には、長慶天皇の御陵があります。

多宝塔

※多宝塔と長慶天皇御陵

比較的新しい多宝塔です。下にあるのが、長慶天皇の御陵です。

弁慶の力石

※弁慶の力石

家追討の命を受けた源義経が、四国上陸後、讃岐国屋島に向かう途中でこの地に兵を休めたそうです。金泉寺で戦勝祈願をしたことが『源平盛衰記』に記述されているそうで、そこからこの弁慶の力石伝説が生まれたのでしょう。伝承では、弁慶が自らの力量を披露するためにこの大石を持ち上げたそうですが、この手の伝承はあちこちに見られます。

黄金の井戸(地蔵堂)

※黄金の井戸(地蔵堂)

黄金の井戸と地蔵尊を祀っているお堂です。弘法大師が井戸を掘ったとされるお寺であり、寺号の由来となっている井戸ですが、現在もこんこんと水が湧き出ていて、この井戸をのぞき込み、影がはっきり映れば長寿、ぼやけていると短命という言い伝えがります。また、井戸の背後に祀られているお地蔵さんは、首から上の病気に霊験があると言われています。

閻魔堂

※閻魔堂

地蔵堂に脇にある、閻魔大王を祀っているお堂です。

極楽寺のご詠歌

ご詠歌とは、四国八十八ヶ所の各霊場の特色を五・七・五・七・七の三十一文字で分かりやすく詠んだもので、民衆に各霊場の特色を分かりやすく教える意味合いがあります。

ごくらくの たからのいけを おもえただ

 こがねのいずみ すみたたえたる

(極楽の 宝の池を 思えただ
   黄金の泉 すみたたえたる)

漢字表記は一般社団法人四国八十八ヶ所霊場会のホームページ*4によります。

「ごくらくの」で始まっていますが、第2番札所の極楽寺ご詠歌も「ごくらくの」で始まります。両者に共通の要素が何かあったのかもしれません。

このご詠歌も、掛詞などはなさそうで平易な歌だと思われます。澄み湛えている黄金の泉を見て、極楽の宝の池を一心に思いなさい、といったところでしょう。

なお、一般社団法人四国八十八ヶ所霊場会のホームページ*5では、「極楽の宝の池を思ただ 黄金の泉すみたたえる」となっていますが、四国遍路 聖地巡礼のページ*6によると、「極楽の宝の池を思えただ 黄金の澄みたたえたる」となっており、字数・発音を考えて上記のとおりとしました。

金泉寺へのアクセス

徳島県観光協会のホームページ「阿波ナビ」に詳しいアクセス情報が掲載されています。

www.awanavi.jp(2024.4.20閲覧)

公共交通機関

JR「板野駅」から徒歩約10分。

お車

高松自動車道「板野IC」から旧撫養街道を西に約3分。

駐車場あり。約14台。無料。

金泉寺データ

ご本尊 :釈迦如来

宗派  :高野山真言宗

霊場  :四国八十八ヶ所 第3番札所

所在地 :〒779-0105 徳島県板野郡板野町大寺字亀山下66

電話番号:088-672-1087

宿坊  :なし

納経時間:8:00~17:00

拝観料 :無料

境内案内図

www.seichijunrei-shikokuhenro.jp(2024.4.20閲覧)

上記サイトの当該箇所に境内の案内図があります。

南坊の巡礼記「金泉寺」(2020.7.23)

出発前に、極楽寺のトイレをお借りしました。「しました」と書いていますが、うろ覚えです。トイレの後、車に乗り込み、次のお寺を目指します。

県道12号線を西へと進むと、しばらくして県道1号徳島引田線の高架が出てきます。高架をくぐると、案内標識が出てきました。次の信号を右折すると、1.6kmで金泉寺に到着するようです。

ただ、右折後にどこで左折したのかちょっと憶えていません。右折後1本目の細い道を左折したのか、2本目の信号のある交差点を左折し、旧撫養街道に入ったのか、そこは明瞭ではありません。おそらくカーナビに従っていたので、言われるままに運転していたのでしょう。とにかく合ってるのか?というような細い道を進みました。

16時15分、金泉寺に到着しました。駐車場はお寺に隣接しています。山門前は大型バスのようで、山門の奥、左脇に境内に隣接して駐車場がありました。

車を停め、白衣輪袈裟などを準備して山門に向かいました。歩き遍路らしき方もいらっしゃいました。この段階で日がかなり傾いてきていたような感じで、夕方だなあと思った記憶があります。

これまで相当自信なさげで挙動不審だったと思いますが、少しずつ慣れてきたように思います。ただ、境内をうろうろと見て回るほどの余裕はなく、本堂大師堂納経を済ませると、すぐに納経所へ向かいました。

納経所はおばさんでした。無事に記帳・押印していただきました。

さて、これで17時少し前です。もう、次の札所には間に合いません。ホテルに帰ることにしました。

ホテルは事前にリサーチしてあった、ホテルサンルート徳島です。実は今後、私の徳島における常宿になるのですが、この段階ではほぼ初めての利用というところでした。

ところが、車をホテル裏の広い駐車場に停めて中に入ってみますと、何やら記憶が蘇ってきました。

そうです、実はこのホテル、温泉だけ過去に一度利用したことがあったのです。あれはちょうどこの日から10年前の2010年のことだったと思います。その前年の冬に新しい車、ホンダのフリードが納品され、淡路島一周の日帰りドライブに出かけていたのでした。その帰り、徳島港で南海フェリーに乗って和歌山に帰る際、このホテルのびざんの湯を利用したはずです。たまたまネットで検索してヒットした温泉でしたので、ホテルの中の温泉とは思わなかったのですが、ちょうど帰り道にも当たっていたこともあり、使わせていただきました。

さて、ホテルにチェックインした後は、外で食事です。基本的に私は素泊まりのことが多いです。これは別にホテルで食べるのが嫌いだからというわけではなく、お遍路だと時間が読めない、と考えたからです。この考えは、翌年の歩き遍路にも受け継がれます。

結局、支那そば よあけというお店で支那そば(中)とギョーザのセットを頼みました。1,000円いったかいかなかったかという程度の値段で、大満足でした。肉をチャーシュー以外にも選ぶことができるのがうれしいですね。私は豚のバラ肉にしたと思います。

食後はホテルに戻り、翌日の準備をしました。計画段階で、翌日は雨とのことでした。どこまで行くか、むしろ行くのをやめておくべきか、この時はかなり悩み、考えていたように思います。

ということで、第4番札所からまあ行けるところまで行こうという考えに落ち着き、早めに就寝しました。

宿情報

ホテルサンルート徳島

禁煙シングルルーム

宿泊費:7,400円?(記録がなく不明だが、翌年の実績)

室内に冷蔵庫・バス・トイレあり

WiFiあり

大浴場あり。温泉

洗濯機・乾燥機あり(3台)

洗濯機300円、乾燥機100円

アクセス:バス停から1分

コンビニ:1階に併設

フロントスタッフ、温泉のスタッフともにホスピタリティが高く、私にとっては徳島の常宿