西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

お遍路テレビ鑑賞① NHK「超体感!四国 お遍路の旅」を観ました!

「超体感!四国 お遍路の旅」タイトルシーン ※スマホで撮影

新年明けましておめでとうございます!

2024年は甲辰の歳です。十干では「甲」は「きのえ」と読み、始まりの年となります。また、十二支の「辰」は上昇を思わせる動物です。2024年が皆さんにとって、よい一年となるように祈念申し上げます。

さて、昨年末の緊急告知のとおり、NHKにて元旦にふさわしい番組が放送されました。ここでは、そのレポートをしていきたいと思います。

NHK「超体感!四国 お遍路の旅」鑑賞レポート

「一年の計は元旦にあり」と言われますが、この番組をご覧になって、早速お遍路の計画を立てた方は多いのではないでしょうか。私も四国八十八ヶ所を歩くか、西国三十三所を歩くか、迷ってしまいますね。

番組について

番組情報

制作国:日本

制作 :NHK大阪

制作年:2023年

公開日:2024年1月1日

データ:カラー/88分

 

スタッフ

制作・著作:NHK大阪

制作協力:放送映画

制 作 :NHKエンタープライズ

制作統括:山田真規子・伊藤雄介

プロデューサー:西口賛・中村亮

ディレクター:横谷裕也・冨山拓也・郷原宏久

取材  :山下勇希

リサーチャー:氣久山ひろし・岩崎彩

CG制作:粂亮治

音響効果:土松卓司

映像技術:佐藤雅哉

音 声 :宮本恭徳・青地誠樹

撮 影 :吉元伸和・石原慶丈・森一生

映像提供:アートリサーチ

     えんがわ

     海陽町     

     徳島県ロケーション・サービス

取材協力:モートン常慈

                  愛媛大学 四国遍路・世界の巡礼研究センター

     坂本屋

     田中家住宅

     椿神社

語り  :堤真一・上白石萌音

内容紹介

「本物のニッポンが、そこにはある」。いま外国人がこぞって訪れる「四国お遍路」の魅力を「超体感」をキーワードにおくる紀行番組。お遍路を経験した先輩からの『ガイドブックにのっていないオススメ情報』をもとに1400キロの道のりを主観目線の映像で旅する。グルメ、歴史、文化、悲喜こもごものお遍路さんの人間模様あり。新年の幕開けにふさわしいご利益情報もいっぱい!世界中の人を魅了するお遍路の旅にでかけましょう!!

※NHKホームページより引用*1

番組を見て

番組を見て、思ったところを書いていきます。

純粋な感想(ネタバレもあるかも)

いやあ、とにかく新年の最初に見るのにふさわしい番組でしたね。気持ちがリフレッシュされて、引き締まったように感じます。

まあ映画ではないので、起承転結のようなものはありませんが、感動的なメッセージはたくさんありました。

高知の漁港で、ご夫婦で民宿おおまちを営んでおられる明神妙子さん。漁師をされていて朝4時に出漁されるご主人を、いつも静かに見送っておられるようです。「船に着くまでは見送ってあげたいね」という言葉と、お大師さまの前で夫の海上安全を祈る姿が、とても尊いものに感じられました。またご主人の好久さんも、帰宅の際に「ただいま。無事、生きて帰ってきました」と飄々とした感じで妙子さんに言葉をかけておられました。やはり漁師の仕事というのは命懸けであり、だからこそ一日一日を精一杯生きているという、「人間」としての純粋さが感じられる場面でした。

また、久万高原から松山市内に下ってくる、三坂峠を下り切った先にある丹波の里接待所では、相原喜美栄さんが素晴らしいことをおっしゃっておられました。アメリカ人のお遍路さんが60才からこの先、どのような人生を生きたらいいのかと相談すると、「人のためにね。喜んでもらえる人生が幸せで」とごく自然体でおっしゃっていたのです。「(お接待は)生きがいです」とも語っておられ、お接待を通じて人を助けているようで、実は自分が助けられているという、人としての理想的なあり方を教えてくださっていました。

また、高知県営渡船の種﨑待合所で北海道から来たお遍路さんと話していた女性は、室戸岬の実家で父親がよくお遍路さんを泊めていたという話をしておられましたし、三坂峠で写真家の横山良一さんが出会った女性も、お遍路のことを「最高の家出」と語ってくれました。

番組中でも触れられていましたが、本当に四国では弘法大師さまの精神が息づいている、弘法大師さまが生きておられるのだ、ということを実感しました。

種田山頭火先生の言葉、「人生即遍路」も紹介されていましたが、まさに「生きる」ということは「遍路」そのものであり、逆に「遍路」も「生きる」ということそのものだと感じさせてくれました。

巡礼者目線の感想(ネタバレあり)

番組は2023年の後半に撮影されたもののようでした。おそらく、11月以降でしょうか。

私が歩き遍路で四国を歩いたのは2021年7月から8月にかけてのことでしたので、状況がかなり変わっていることが分かりました。

まず、外国人のお遍路さんが相当数戻ってきている、ということです。国籍も様々で、アメリカ人、オランダ人、ドイツ人、カナダ人、オーストラリア人、台湾人など、バラエティに富んでいました。

そう言えば、2023年12月31日の「ゆく年くる年2023」では、徳島県にある第6番札所安楽寺の様子が紹介されていましたが、年末年始のお勤めに参加されている、つまりは宿坊に宿泊されている方の半数近くが外国人の方だったように見えました。このことは、NHKの四国で放送されていた違う番組でも触れられていたように思います。

実際、今回の番組冒頭ではフランス人女性二人組が「日本の風景や文化、人々を発見するために来ました。東京や大都会とは違う日本を見られるの」と話しておられましたし、カナダ人男性は「四国はいろいろなものがあり本当に美しい。山があり海があり、寺院も本当にすばらしかった」と話しておられました。

つまり、コロナ禍が明けて外国人観光客の訪日が解禁されている現在は、多くの外国人がよりディープな日本を求めてお遍路に来られる、ということですね。

スウェーデン人男性が「遍路を歩いていると日本人はとても親切だ」とおっしゃっていましたが、やはり四国には古き良き日本の姿が残っている、ということでしょう。そしてそれを維持してくれているのが、お大師さまなのでしょう。

また、季節も関係あるでしょうが、日本人の方も結構大勢歩いておられることが分かりました。コロナ禍で多くの民宿や旅館が休業や廃業に追い込まれたと思いますが、宿泊事情はどうなっているのか、気になるところです。もともと遍路宿はご亭主の高齢化が否めない状況でしたので、宿が足りない、オーバーツーリズムのようになっていないかが心配です。

つづいて、番組内で扱われていた「お遍路を経験した先輩からの『ガイドブックにのっていないオススメ情報』」についてお話しましょう。

うーん、役立ちそうで役立たない情報も多かったですね。祖谷温泉、かなりルートから外れています。ちょっと車じゃないと無理じゃないですかね。私も行ったことがありますが、ケーブルカーで川原まで降りて入った露天風呂、忘れられないですね。入った時はぬるいかな?と思ったのですが、じわじわと体が温まり、とてもいい温泉でした。今までに入った温泉の中でも、ベスト3に入ると思います。ちなみに、あとの2つは未定です。

まあとにかく、祖谷温泉を扱う必要はなかったなあということです。それは単純に四国旅行で来ればよいかと。

また、徳島県海洋町でおこなわれた、轟神社秋季例大祭も必要ない情報でしたね。ナビゲーターのさんが「そのお祭りは、遍路道から車でおよそ30分」と語っておられましたが、車で30分って歩いたら何時間ですか? Googleマップによると、最寄りの「阿波海南駅」から轟神社まで27.1km、5時間54分かかるそうです。往復で2日間、遍路道を外れることになりますからね。歩き遍路にはちょっと不要な情報でしたね。

ただ、いずれも車遍路なら寄り道は十分に可能です。

歩き遍路をやってみると、四国の雄大さ、広大さを体感できますが、同時に、人の営みのすごさも分かります。一歩一歩歩いていたらたどり着くんだなあという感じですね。

最後に、上記の感想を体現し、この番組中で大きく成長した若者をご紹介しましょう。東京で俳優をやっておられる、志田原泰輝さん、26才の男性です。

彼と番組スタッフは、第28番札所金剛福寺へと向かう大岐海岸の遍路道で出会いました。砂浜ということもあるでしょうが、この時は彼はよたよたと歩いており、「どうですか、歩き?」とスタッフに聞かれて、「いや、しんどいですね、ハハハハ」と即答していました。さらにお遍路の感想をスタッフに聞かれると、「楽しいのはほんの一瞬くらい。あとは全部つらいですけど」と答えていたのです。

その彼と、結願所である第88番札所大窪寺に向けて歩いているところで、およそ一か月ぶりに再会したのでした。何だか歩き方も力強く、また表情も柔らかになっていました。ナビゲーターの萌音さんは「服装変わりました?」とボケたことをおっしゃっていましたが。

しかし、その赤いウィンドブレーカーも含めて、靴やマットなど、いただいたものを紹介してくれる志田原さんは、本当にうれしそうで、下さった方に対する感謝の念があふれていました。萌音さんもそれに気づき、「何か明るくなりました?」と述べられましたが、それに対する彼の答えは「正直楽しかったんですよ、お遍路が。いろんな出会いがあって」でした。その笑顔も、本当に屈託のとれたいい表情でした。

最後に結願の感想を求められた志田原さんは、こう語ります。

「自分の一歩を信じれるようになったというか。信じてたら絶対着くから。足摺岬に行く時とかは、いやこれ本当に終わるのかなっていう不安と、この先どうしようかなみたいな(不安と)を二つ同時に考えてて。何かこう不安だなって思っているよりも、その時間がもったいないですし、ならこう歩いて、一歩でも前に進んだ方が、結願にたどり着けるっていうのを、歩きながら気づいたんで、何か不安はなくなりましたね、途中から。オーディションも、受かる受からないってすごい、結果だと思うんで、そこまでに自分がどうやって歩いたかとか、どういう感情を得たかとか、どういうとこが成長したかってとこがメチャクチャ大事。落ちた、受かったっていうのは、何か、その次なんかなっていう」

この言葉、まさに「人生即遍路」を表しているように思います。まだ「人生」という大きなスパンでは物事を考えられない方でも、受験に置き換えても通じる言葉ですよね。「大学に受かる受からないが問題なんじゃない、そこまでにどれだけ頑張ったかが大事だ」と、こういうことを志田原さんは言っておられるのだと思います。

人生で最も大切なこと、それは結果ではなく過程である、そしてその過程は、一歩一歩積み上げていくものである、そういうことなのでしょう。

最後に

いや、本当に元旦に見るべき、とてもいい番組でした。残念ながら、88分の番組のうちかなりの尺を徳島県に使ってしまっていたので、ダイジェスト版ではなく、各県版を見たいと思います。編集し直して、どこかで見せてくれないかなあ。

「超体感!四国 お遍路の旅」

※NHKプラスでの配信は2024年1月8日(月)8:58まで。下記リンクからNHKプラスに飛べます。

www.nhk.jp(2024.1.1閲覧)

オススメ度:☆☆☆☆☆