西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

西国三十三所 巡礼には何が必要なの?

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いらすとや「お遍路のイラスト」

皆さんの巡礼熱もだんだん上がってきたのではないでしょうか?

しかし、いざ巡礼を始めようにも、いったい何を用意すれば良いのか分からないなあ、という方は多いでしょう。

そこで、ここでは巡礼に必要なものを説明していきたいと思います。

巡礼に必要なもの

極論をすれば、巡礼に必要なモノは特に決まっていません。観音さまを敬う、アツイ心さえあれば十分です。

しかし、四国八十八ヶ所のお遍路さんスタイルの影響もあって、西国三十三所の観音巡礼でも、おおよその巡礼七つ道具のようなものが定まっています。

では、順番に紹介していきましょう!

巡礼七つ道具

それでは、巡礼七つ道具ともいうべき、外面的な装備について説明していきましょう!なお、説明の一部は札所会推薦の『西国三十三所勤行次第』に依拠しています。

菅笠すげがさ

正面に大日如来を表す梵字が書いてあり、四方に次の文言が書いてあります。

迷故三界城(迷うがゆえに三界は城のように出口がない)、

 悟故十方空(悟るがゆえにあらゆる方角は「空くう」そのものである)、

 本来無東西(本来は東西などなく)、

 何処有南北(どこに南北があるというのだろう)」

また、「同行二人どうぎょうににん」という言葉も書いてありますが、これは、観音さまと道中はつねに一緒ですよ、という意味です。

昔は西国三十三所の巡礼中に亡くなる方も多く、亡骸の上に載せて棺桶の蓋にしたと言われています。

お寺の堂内では帽子を脱ぐのが礼儀ですが、菅笠は脱がなくても大丈夫です。

ちなみに「菅すげ」とは、カヤツリグサ科の植物で、その葉が笠や蓑、縄などの材料とされてきました。風通しもよく、日も遮るので快適ですが、雨も通してしまう欠点があります。雨除けカバーもセットで販売されていることが多いので、こちらも用意しておきましょう。

金剛杖こんごうづえ

杖の上部が五輪塔のように成形されており、やはり梵字が書かれています。仏さまそのものを表すことから、直接触るのは畏れ多い、ということで杖カバーをかけて握ります。観音さまの分身ともされますので、宿ではキレイに拭いて、床の間に置くのが作法とされています。

こちらも巡礼者が旅の途中で亡くなった場合には、墓標としても使用されました。また、鈴をつけておくと熊除けにもなります。

巡礼路が平地のときはそれほどのありがたみを感じないかもしれませんが、山道に入るとものすごく力を発揮してくれます。とくに下りの際は体重がひざにかかりすぎないように分散してくれますので、本当に助かります。

さんや袋

さんや袋または頭陀袋ずだぶくろなどと呼ばれます。肩から提げるカバンですね。この中に、納札ローソクなどの巡礼用品などを入れます。最近は巡礼時にリュックサックを背負う方も多くなりましたが、さんや袋のように提げる形のカバンはいろいろなものを取り出すときに便利です。歩きのお遍路さんは、ウェストポーチで代用しても、もちろんかまいません。

笈摺おいずる

昔、旅をする巡礼者は、「おい」という箱のようなものをリュックサックがわりに背負っていました。その際、衣が擦れて破れてしまうことを防ぐために、笈摺という袖のない白衣を着るようになりました。

『中山寺由来記』によれば、笈摺を巡礼者の制服のように定めています。

白衣ひゃくえは白布を以て笈摺おひづるとなし上に彌陀みだ觀音くわんおん勢至せいしの種子を置き下に大士の名號を照し……

袖のない白衣笈摺として、上には阿弥陀如来観音菩薩勢至菩薩などを表す梵字を書き、下に大士、つまり仏さまのお名前を書く、ということが定められています。

ですから、本来はこの三尊のお名前を書いたと考えられますが、現在は「南無阿弥陀仏」「南無観世音菩薩」と書かれているものを用意しましょう。

袖のある白衣を用いても誤りではないと思いますが、、いや仏サイトである総持寺オンラインショップでは袖のある白衣は販売されていませんので、やはり西国三十三所のスタンスとしては笈摺を推奨していると考えられます。

なお、笈摺の下に着る服装ですが、とくに華美すぎるものでなければ問題ありません。昔は白衣がそのまま死装束とされたために、白衣を着ていたようです。山を歩く際には藍色のジーンズは蛇除け・虫除けにもなりますので、現在は白衣の上下にこだわらなくても大丈夫です。

輪袈裟わげさ

お坊さんが着けておられる袈裟の、簡略バージョンが輪袈裟です。

「南無観世音菩薩」「西国三十三所巡礼」などの文字が書いてあったり、単なる文様だけのものもあったりします。また、般若心経などが書かれているものもあります。まったく個人的な意見ですが、限定的な文字が書いてある場合は、他の巡礼時に流用することがはばかられますので、汎用性の高い文字や文様の方がお勧めです。

読経や修行の際に着用するものですので、食事やトイレなどのときは外さなければなりません。ですから、普段は外しておいて、さんや袋などに入れておくといいでしょう。

念珠ねんじゅ

数珠じゅずのことです。左手に持つのが作法です。ご真言お念仏を唱える際、回数を数えるために使います。基本的な珠の数は108とされますが、その半分や4分の1のものもあります。宗派によって数珠の形は異なるとされますが、それほど神経質にこだわる必要はないようです。

『西国三十三所勤行次第』さいこくさんじゅうさんしょごんぎょうしだい

西国三十三所の巡礼で読むべきお経(「開経偈かいきょうげ」、「懺悔文さんげもん」、「般若心経」、「妙法蓮華経觀世音菩薩普門品第廿五偈みょうほうれんげきょうかんぜおんぼさふもんぼんだいにじゅうごげ」、「延命十句観音経えんめいじっくかんのんぎょう」、「回向文えこうもん」)、巡拝のしおり(「西国巡礼のはじまり」、「観音様」、「巡拝者の持ち物」「参拝の順序」「納経」についての説明)、三十三所の国名・山号・寺号、ご詠歌、ご本尊とそのご真言が記載されています。

はっきりいってこれがないと西国三十三所をきちんと巡礼することができません。

私は第二番札所紀三井寺で購入いたしましたが、すべての札所で販売されているわけではないようです。確実なのは、、いや仏サイト総持寺オンラインショップで購入することでしょう。

ただ、最初にも申し上げたとおり巡礼は心の問題ですので、『西国三十三所勤行次第』がなくてもかまいませんし、これらの七つ道具がまったくなくても問題はありません。

巡礼用品

それでは、巡礼に必要な消耗品について説明しましょう!

納札おさめふだ

せっかく巡礼をしたのに、観音さまに気づいてもらえずにご利益がなかったら巡礼した意味がない、と昔の人は考えたようです。そこで、納札という名刺のようなものを用意するようになりました。

『中山寺由来記』では納札のことを「禮簡」と呼び、次のように書かれています。

三十三箇の禮簡は金銀銅木もく紙を以て分に從ひ造つくりなし、上に種子を點じ南無観世音菩薩と出だし各次第に白縷はくるを以て掛くべし 

 つまり、納札は金・銀・銅・木・紙など自分の分に応じてつくり、上に梵字、つづけて「南無観世音菩薩」と書いて白い紐で各お堂に掛けなさい、というわけです。

また、『西国三十三所勤行次第』によれば納札は「木や金属のものを、お堂の柱などに打ち付けて納め」たとあります。「札所を打つ」、という表現はここから来ています。それにしても、金や銀の納札があったとは、罰当たりですが盗む人も大勢いたことでしょう。

また、『中山寺由来記』では次のようなことも書かれています。

家貧しく財乏しき族やからは大慈名號のふだを行者に付して靈場に納め供養の財産其力に任すべし

自力で三十三所を巡礼できない人々がどうすればよいかについて言及している箇所ですが、貧しい人は納札を巡礼の修行者に託して札所に納め、供養をしたことにすればよい、と書かれています。やはり納札が名刺のように使われていたことが分かります。

なお、納札は西国三十三所用のものをご用意ください。参拝日、住所、名前、願いごとなどを書くようになっています。参拝日は前後する可能性もあるので、例えば「令和三年三月吉日」と書けばよく、住所は市町村レベルで大丈夫です。ご利益があるということで、お寺にある納札入れから納札を持って行く人もいますので、あまり個人情報を書きすぎない方がよいです(私は実際に四国でそのような方に遭遇しました)

お線香・ローソク

お線香やローソクは、仏さまにお供えするものです。一説には、お線香の煙が仏さまの食べ物となり、ローソクの炎が仏さまのお力を表すともされます。各札所の常香炉やローソク立ての近くで、お線香やローソクが販売されています。ただ、30円50円などの小銭が必要な場合が多く、ちょうどよく小銭がないこともしばしばです。神サイト、いや仏サイトである総持寺オンラインショップで巡拝用ローソクというのが販売されていますので、自分で事前に購入して持参してもかまわないでしょう。

ご宝印をいただくもの

ここまでは、装備品や消耗品について説明してきました。別項にて説明したとおり、西国三十三所でいただけるご朱印は「ご宝印」と呼ばれ、極楽浄土へのパスポートとなります。それゆえ、必ず集めたいところです。

各札所では、納経所というところでご朱印をいただきます。本来、自分で写してきたお経(写経)を納めたり、観音さまの前でお経を読むこと(読経)を納経といいました。文字通り、お経を納める、ということですね。

ここでは、ご宝印をいただけるモノについて説明します。

納経帳のうきょうちょう

いわゆるご朱印帳のことです。すでに第一番から第三十三番、あるいは番外札所も記載されている場合もあります。西国三十三所札所会が公認しているものや推薦しているものでは、各札所が水彩画で描かれているものもあります。ご朱印ブームの昨今ですから、最も定番のご宝印をいただくためのツールと言うことができるでしょう。カバンに入りやすいのもGood!ですね。

基本的に300円ご宝印がいただけます。

笈摺おいずる・白衣

袖なしの笈摺、または袖ありの白衣にもご宝印をいただくことができます。中央には「南無観世音菩薩」などと普通の笈摺と同じように書かれていますが、その周囲にたいていすでに札所が記載されています。

これを完成させることによって、自らが棺桶に入ることになったとき、死装束として使うことができます。極楽浄土行きのパスポートに包まれるわけですから、安らかに旅立つことができるでしょう。

基本的に200円ご宝印がいただけます。

掛け軸

掛け軸にもご宝印をいただくことができます。中央には「南無観世音菩薩」の文字や観音さまのお姿が描かれており、その周囲にはやはり札所が記載されています。

掛け軸はそもそもお軸の購入費用が高く、完成した後に装幀していただくにも高額が必要ですが、その分家宝として代々引き継ぐことができます。法事の際に出して使用すれば、ご宝印を集めたときの苦労話で座も盛り上がることでしょう。

基本的に500円ご宝印がいただけます。

西国観音曼荼羅さいこくかんのんまんだら

ご宝印をいただくための最も新しいツールです。八角形の納経札ご宝印をいただき、額装して曼荼羅をつくります。納経札のセット(台紙付き)をまず3000円で購入し、それを一つずつ持って行き各札所でご宝印を書いていただきます。セットを購入できる札所が十六箇所しかないため、集める際は慎重に計画を立てる必要があります。

基本的に500円ご宝印がいただけます。

くわしくはこちらをどうぞ!

最後に

いかがでしたでしょうか。きちんと道具をそろえようとすると、そこそこの金額がかかってしまいます。しかし、何度も申し上げますが観音巡礼は心の問題です。アツイ心さえあれば道具にこだわる必要はありません。大事なことは、参拝を始めてみることなのです。

というわけで皆さん! Let's start the Pilgrimage West!

 

最終更新:2022.9.4